「映画・テレビ」カテゴリーアーカイブ

映画『ハート・ロッカー』空廻る勇気と正義

昔はスーパーマンだったのに、今じゃ……。

第82回アカデミー賞6部門受賞の映画『ハート・ロッカー』を劇場で鑑賞。ネタバレ注意。2004年のイラクを舞台に、爆弾処理に命を賭ける米兵を描く。エンターテイメント重視の『アバター』を押さえた、リアリティ重視の戦争映画ということですが、なんとも主人公がいただけない。仲間の危険もかえりみず、ずかずかと爆弾に近づいて処理、処理、処理。スキルも経験も豊富なんでしょうけど、強運の持ち主というよりは、単なる怖いもの知らずという感じ。仲良くなったDVD売りの少年が殺されたと思いこんで、民家を襲撃してみたり、せっかく生還したのに、麻薬中毒のようにふたたび戦地へとおもむく。守るべき家族もいるのに、それすら置いて危険を求める意味不明な主人公。なんだよコイツ……。戦場描写がリアルなだけに、エキセントリックすぎる主人公の行動が鼻につきます。

つまりは、そういうことなのでしょう。もとは自分が援助していた国家に攻めこみ、ありもしない大量破壊壁を求めてグダグダな戦いを続ける某超大国。共感を拒否するような、戦争中毒の主人公が何を象徴しているかは、観る側の判断に任されています。

【映画】『ミッドナイト・エクスプレス』刑務所残酷物語

ガールフレンドは、サービスしすぎです。

1978年の映画『ミッドナイト・エクスプレス』をWOWOW録画にて鑑賞。ネタバレ注意。1970年のトルコにて、首都イスタンブールから国外に麻薬を密輸しようとしたアメリカ人青年が逮捕、投獄される。ここまでは自業自得なんだけど、いつまでたっても出所させてもらえず、自力でミッドナイト・エクスプレス(深夜特急=脱獄の隠語)するまでを描く。実話をもとにした話ですが、獄中の描写がとにかくヒドイ。非衛生的で看守は強権的。常に密告者の目が光ってる。脱獄へむけて、バイオレンスの度合いが、どんどん加速していく。

ただコレ、かなり描写が誇張されているらしく、本当にここまでヒドイ扱いを受けたわけではないようです。そもそも、どんな理由をつけても、故意に麻薬を密輸しようとした主人公を同情的に描くのは無理がある。政治的、国策的な匂いのする映画ですが、エンターテイメントとしての暴力描写は秀逸。どんどん、最底辺へ追いやられていく主人公の凋落っぷりは、いっそすがすがしいですな。

1958年版映画『無法松の一生』不遇の高性能車夫

暴れん坊さんにょ!

人力車がマイブーム。小説に続いて、1958年版の映画『無法松の一生』をDVDにて視聴。最初に映画化化された1943年版のモノクロ映画は、戦時下ということもあり検閲されたカット版だったのに対し、カラーの1958年版は問題とされたラストもバッチリ映像化。

世が世なら大成したかも知れない未完の大器、車夫の松五郎が縦横無尽に活躍する。クライマックスの太鼓打ちのシーンは、原作の迫力を余すところなく映像化。人力車の車輪を、時の流れに仮託した描写も秀逸です。豪放で実直。足が速く、喧嘩が強い。伝統の秘太鼓も継承と、無学ながらもこれだけ高性能なら、事業でもはじめて吉岡の未亡人と釣り合う社会的地位に成り上がればよかったんじゃない? などと思うのは、無粋でしょうか? ハイ、無粋ですね。

デストロイな初代『ゴジラ』を観た

次のカタカナを漢字に直せ→ゴジラ(5点)。

東宝特撮映画 DVDコレクションVol.1で、1954年の映画『ゴジラ』を観た。ネタバレ注意。大戸島の伝承にある怪獣「呉爾羅」が、核実験の余波で復活し、東京を襲撃したからさあ大変。「生物学的に貴重でも、害獣である以上は駆除しなければならない」や、「ゴジラを倒しうる新兵器が、あらたな戦争の火種になるのではないか」、などのジレンマがちゃんと描かれている。被爆体験をふくめた戦争再来の恐怖が具象化した存在こそが、ゴジラなのです。

シリーズ物の第1作は、あれこれ試行錯誤がうかがえて面白い。水戸黄門だって、初期シリーズは印籠をだすタイミングや所作が確定しておらず、安心して観られないところが素敵。ゴジラも、第1作は定期的に日本を襲撃する巨大生物というフォーマットが存在しないところから生み出されているので、ゴジラの暴れっぷりも、人々の逃げ惑いっぷりも、新鮮さがある。登場する乗用車やバス、ヘリコプターといった実在のメカが、古くさいを通りこしてビンテージの域に達しているのも見物です。

モノクロ映画時代の作品なので、特撮はチープだし、迎撃作戦にもツッコミ所はあるのですが、登場人物たちの想いがコンパクトながらも書き分けられていて、大人の鑑賞に耐えるドラマになっています。

冷たいドリル『海底軍艦』を観た

地に潜り、空も飛ぶよ!

東宝特撮映画 DVDコレクションVol.4で、1963年の映画『海底軍艦』を観た。ネタバレ注意。地上征服をもくろむ「ムウ帝国」と、旧日本軍の残党が極秘に開発した海底軍艦が激突する。本作で有名なのは、何と言っても海底軍艦「轟天号」。ドリルのついた戦艦が空を飛ぶという、男子のロマンが詰まった素敵メカ。主力兵器は、何でも絶対零度に凍結させる冷線砲。海底軍艦という名前以上に、陸海空を自在に駆ける万能戦艦です。

先日鑑賞した1973年版『日本沈没』は、特撮に経年劣化を感じさせるものの、骨太なストーリーで楽しめたので、『海底軍艦』も期待していたのだが、こちらは子供のころは面白くても、大人になって見返すと「アレレ?」となる感じ。大日本帝国復興を企図して建造された「轟天号」が、世界帝国たる「ムウ帝国」の凶行を阻止するため、いわば毒をもって毒を制す形で世界の危機を救うところや、怪竜マンダとの死闘、恋や親子の確執と言った、面白くなりそうな要素が、軽く流されているのはもったいないと思った。尺の都合か、拉致国家であるはずの「ムウ帝国」女帝が、あまりにも簡単に拉致られたのには、参った。とにかく轟天号がカッコイイので、その勇士を見る価値はありますけど、それ以外が物足りない感じ。

ドリルの先端が、回転時に前後へピストン運動しているのが、萌えポイントです。

1973年版映画『日本沈没』小野寺君ライダー

で、いつ変身してくれるのかな?

東宝特撮映画 DVDコレクションVol.6で、1973年の映画版『日本沈没』を観た。高度成長に沸く昭和の日本である日、日本列島が沈没することが明らかになり、さあ大変という映画。平成日本版はすでに鑑賞してますが、1973年版の方が面白かった。

特撮シーンは基本的にミニチュアですが、かなり気合いが入っており、造り物とわかっていても楽しめる。日本が沈没するというテーマだけに、ブッ壊しまくり、フツ飛ばしまくりが爽快。動の特撮シーンが迫力満点な一方、静の会話シーンは小声でボソボソ喋っているので聞き取りづらい。ここらへんは、劇場で観るべき映画だから当然か。主役が藤岡弘さんなので、いまにも仮面ライダーに変身しそうなモミアゲっぷりでした。

パニック物のテーマとして、世界滅亡ではなく日本列島だけが沈没するというのは、いささか小規模ではありますが、その分、日本人にとっては身につまされる題材ではある。この作品が他と一線を画するのは「日本が沈没するなら、いっそこのまま滅んだほうがいい」という意見が提示されること。他国のパニック物で、そういう考え方は、なかなかお目にかかれないと思う。

『日本沈没』は平成漫画版にハマッてから、原作、映画、マンガと一通りおさえたつもり。あとはテレビドラマ版と、ラジオドラマ版と、『日本以外全部沈没』かな。

映画『ブレードランナー 最終版』で、目を皿のように

ふたつで十分? いやいや、お次は究極版ですね!

リドリー・スコット監督の近未来SF映画『ブレードランナー 最終版』を、WOWOW録画にて鑑賞。陰鬱な、2019年のロサンゼルスを舞台に、脱走した人造人間レプリカントと、それを追うブレードランナー、デッカードとの攻防をハードボイルドタッチで描く。最初に観たのは学生の頃にレンタルビデオのVHSでしたが、今回はデジタルリマスター版をハイビジョン録画で観た。2019年って、なにげにあと10年後なんだな!

何度も観た映画なので、ストーリーはわかりきってる。にもかかわらず、必死こいて観てしまったのは、画面がクリアなこと。VHS+ブラウン管から、デジタルリマスター版+ハイビジョン液晶テレビへグレードアップしたおかげで、いままで潰れていた細部がくっきりと視認できる。デッカードの胸毛から、モブキャラの衣装、看板や落書きまで、隅々まで神経が行き届いていることに感激。

いつ観ても、デッカードの弱キャラっぷりは最高です。

お台場ガンダム・アゲイン

お台場で人と会う用事ができたので、ついでに実物大ガンダムを再見してきました。

それと、東京ビックサイトで『GUNDAM BIG EXPO』というのもやってたので、そこの無料ブースもみてきた。展示品のなかでは、ザク頭デザインのキャップがよい感じ。

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そして2度目のお台場ガンダム。動画やガンダムがメインのショットは前回撮影したので、こんかいは会場のにぎわいを中心にお届けします。

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会場は少々、砂埃が舞っており、ガンダムの足もとがよい感じによごれてた。本当のよごれは、ウェザリング(汚し塗装)とはいわないよね?

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そして、売店であまり並ばずにすみそうだったので、ついオフィシャルブックを買ってしまった。なかみは、実物大ガンダムの製作記と、歴代ガンダムシリーズの紹介、コラムなどであった。

零戦もとんだ空に『サマーウォーズ』を観た

アニメ映画『サマーウォーズ』を鑑賞。※以下、ネタバレ注意!

先輩の代理恋人役に、長野まででかけた主人公が、大家族パワーと数学能力を駆使してネット世界の窮地を救う……という、ちょっと「混ぜるな危険」っぽい要素を、うまくエンターテイメントに昇華してる。冴えない主人公が、世界の危機をすくったうえにギャルゲットもしてしまうという、1983年の映画『ウォーゲーム』の正当な系譜。おおきなお友達むけというよりは、大人になるまえの子供たちへむけた、エンターテイメントといった印象。終盤の宇宙探査機落下より、中盤のインフラを混乱させる攻撃のほうが被害甚大じゃね? とか、いろいろツッコミどころはあるのですが、多数のキャラクターにそれぞれ見せ場をつくり、ラストまで盛りあげていくテンションの高さはハンパじゃない。おなじアホなら、おどらにゃソンです。僕はかなり気にいった。

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どれくらい気にいったかといえば、おもわずパンフレットを買ってしまうぐらい。『時をかける少女』も劇場で観たし、それ以外の映画もいくつか観てるけど、ここ数年でパンフレットを買おうとまで思ったのはひさしぶりです。命にかかわる危険のない(危険のすくない)世界の危機を盛りあげるというのはむずかしいと思うし、そこらへんのゆるさをギャグとして自嘲している部分もありますが、それでも「みんなで協力してがんばる」ことを全肯定する物語に共感しました。

以下、男性限定(?)のハナシで恐縮ですけど、映画がおわったあとトイレに行くじゃないですか。そうすっと、みんなトイレを我慢してたから行列ができやすく、そこで鑑賞直後の感想をはなしてるのが聞けたりします。こんかいも「感動した!」という素直な意見があるいっぽう、「あれで感動できんのかよ?」的な、斜にかまえた意見もあり、どちらもナルホドと思いましたね。