ペースが落ちてきたけど、質が上がっているかというと……。
Twitterで書いている、140文字小説のログです。
201)●真意:十数年前に設置されたオブジェが、昨年から五色の輝きを放ち、右から熱風を、左から冷風を吐くようになった。エネルギーの浪費だと批判が殺到したが、市は設置を続けている。「これは全国の節電状況に応じて動くオブジェです」と、担当者のコメント。 タイトルは〈節電〉。
202)●眼鏡風呂:「銭湯に行く時、眼鏡はかける?」「いや、外してる」「君の視力じゃ、何も見えないでしょ!」「0.1でも、輪郭はわかるさ」「男の園が全モザイクなんてサギよ、返品よ!」異性の友人が、銭湯に抱くファンタジーなぞ知りたくもないが……。「テメェで、腐れ生やせ!」
203)●宇宙鰻:「ウナギって、生態が不明だったから、宇宙生物って説があるんだよ」「あながち間違いではないな」そう言いながら二人が食べる蒲焼きは、文字通りの宇宙産。一時は絶滅が危惧されたウナギだが、無重力が稚魚の育成に適していることが判明し、ふたたび大衆魚となっている。
204)●ソレモ:その店には、ソレモという裏メニューがあるらしい。「あの、ソレモを」「ソーダですか?」「は、はい」出されたのは、ただのソーダ水。「これがソレモ?」「店内の隠語で、追加用のソーダをソレモと呼びます。お客様が真似される必要はありませんよ」「……ソレモソーダ」
205)●ジブリの谷:「こないだ観たアニメ映画だけど、スタジオジブリっぽい絵柄なのに、ベッドシーンがあったりして、妙な違和感があったよ」「ジブリの谷現象だね。ジブリ作品に似れば似るほど、異なる部分が目立つのさ」「それを言うなら、最近のジブリ自身、ジブリの谷な気がするよ」
206)●元年:全世界が電子書籍元年となった。すべての書籍に電子化が義務づけられ、紙の書籍は発禁となる。「やっと、ですね」「普及のためとはいえ、ここまでする必要があったのか?」紙を腐食、分解するバクテリアの蔓延により、書籍の三分の二が消滅し、人類はようやく紙と決別した。
207)●代役:寝所の脇に立つ男が短剣を突きおろすと、視界がゆがむ。奴は大仰に低頭し、朽ちかけた余の代わりに、最後の台詞を口にする。「余は二人も要らぬ」奴は余だ。余を知りつくした、完璧な代役だ。その思考が、奴に余を殺させた。理解できる。余も、先代の余を弑逆したのだから。
208)●私道:『通り抜けはお勧めしません』と、私道に立看板。「不可でも禁止でもなく、非推奨なんだ」「近道だし、通っちまおうぜ」だが、道を抜けた二人が、現世に戻ることはなかった。冥界へ直結する「死道」。杜撰な管理が指摘されるのは、死後の世界が証明されてからのことである。
209)●益化:「この益虫、サイコーに逝けすぎィ!」薬剤では耐性と中毒性が増すばかり。患者は増加を続け、社会機構は崩壊寸前だ。「益虫サマに、最・敬・礼ッ!」遺伝子操作によって生まれた、刺されてもかゆくならない『蚊』は、幻覚作用を持つ害虫として世界中で猛威を振るっている。
210)●願望:「このゲームの最新作って、ネットに繋がなくても遊べるよね?」「オフラインモードもあるけど、オンラインが本番だよ」「オフラインで遊べるんだよね!」「うん。でも、レベル制限があるしオンラインじゃないと……」「オフライン!」「ゴメン、君が望むゲームじゃないね」