ペースが落ちてきたけど、質が上がっているかというと……。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

201)●真意:十数年前に設置されたオブジェが、昨年から五色の輝きを放ち、右から熱風を、左から冷風を吐くようになった。エネルギーの浪費だと批判が殺到したが、市は設置を続けている。「これは全国の節電状況に応じて動くオブジェです」と、担当者のコメント。 タイトルは〈節電〉。

202)●眼鏡風呂:「銭湯に行く時、眼鏡はかける?」「いや、外してる」「君の視力じゃ、何も見えないでしょ!」「0.1でも、輪郭はわかるさ」「男の園が全モザイクなんてサギよ、返品よ!」異性の友人が、銭湯に抱くファンタジーなぞ知りたくもないが……。「テメェで、腐れ生やせ!」

203)●宇宙鰻:「ウナギって、生態が不明だったから、宇宙生物って説があるんだよ」「あながち間違いではないな」そう言いながら二人が食べる蒲焼きは、文字通りの宇宙産。一時は絶滅が危惧されたウナギだが、無重力が稚魚の育成に適していることが判明し、ふたたび大衆魚となっている。

204)●ソレモ:その店には、ソレモという裏メニューがあるらしい。「あの、ソレモを」「ソーダですか?」「は、はい」出されたのは、ただのソーダ水。「これがソレモ?」「店内の隠語で、追加用のソーダをソレモと呼びます。お客様が真似される必要はありませんよ」「……ソレモソーダ」

205)●ジブリの谷:「こないだ観たアニメ映画だけど、スタジオジブリっぽい絵柄なのに、ベッドシーンがあったりして、妙な違和感があったよ」「ジブリの谷現象だね。ジブリ作品に似れば似るほど、異なる部分が目立つのさ」「それを言うなら、最近のジブリ自身、ジブリの谷な気がするよ」

206)●元年:全世界が電子書籍元年となった。すべての書籍に電子化が義務づけられ、紙の書籍は発禁となる。「やっと、ですね」「普及のためとはいえ、ここまでする必要があったのか?」紙を腐食、分解するバクテリアの蔓延により、書籍の三分の二が消滅し、人類はようやく紙と決別した。

207)●代役:寝所の脇に立つ男が短剣を突きおろすと、視界がゆがむ。奴は大仰に低頭し、朽ちかけた余の代わりに、最後の台詞を口にする。「余は二人も要らぬ」奴は余だ。余を知りつくした、完璧な代役だ。その思考が、奴に余を殺させた。理解できる。余も、先代の余を弑逆したのだから。

208)●私道:『通り抜けはお勧めしません』と、私道に立看板。「不可でも禁止でもなく、非推奨なんだ」「近道だし、通っちまおうぜ」だが、道を抜けた二人が、現世に戻ることはなかった。冥界へ直結する「死道」。杜撰な管理が指摘されるのは、死後の世界が証明されてからのことである。

209)●益化:「この益虫、サイコーに逝けすぎィ!」薬剤では耐性と中毒性が増すばかり。患者は増加を続け、社会機構は崩壊寸前だ。「益虫サマに、最・敬・礼ッ!」遺伝子操作によって生まれた、刺されてもかゆくならない『蚊』は、幻覚作用を持つ害虫として世界中で猛威を振るっている。

210)●願望:「このゲームの最新作って、ネットに繋がなくても遊べるよね?」「オフラインモードもあるけど、オンラインが本番だよ」「オフラインで遊べるんだよね!」「うん。でも、レベル制限があるしオンラインじゃないと……」「オフライン!」「ゴメン、君が望むゲームじゃないね」

200話達成。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

191)○蚊連草:「ツンとした匂いがするわ」「蚊連草さ。人工的に造られた、蚊に刺されにくくなる草だよ」「蚊が嫌がるの?」「いや、二酸化炭素の感知力を鈍らせるのさ」「……それよりあなた、さっきから声はするけど姿が見えないわ」「蚊連草は、知能を持たせた蚊にも有効みたいだね」

192)●超神:超越の神『プル』は、簡潔を極めている。先のスギアーツ戦役では、魔人軍第十三集団による百八の奇陣を、熟慮ある即決で、直進強行軍により粉砕した。虚飾なく、躊躇なく、最短を穿つ超神プル。「さすが、超シンプルな神様ね」「そのシャレを言うためだけの、厨二設定か!」

193)●コスト優先:自動操縦の格安宇宙船が就航した。『はい、サービスセンターです』「大変だ、船が燃えている!」『脱出ポッドはオプション料金となりますが』「頼む!」『ただいま、別なお客様が自動消火オプションを選択されました。脱出されますか?』「……自爆オプションを頼む」

194)●託卵:頭の中へ、クモに卵を産みつけたられたよ。頭蓋の内に貼りついた、 繭玉のようなソレが孵化したんだ。脳味噌をかじって、小グモたちは育っているよ。耳鼻の穴から這い出てくると、義務を果たしたって感じだね。妄想だって? いま、君にも植え付けたから、じきにわかるよ。

195)●古拙:「これは?」「僕が初めて成功した奴。出来は及第ギリギリだけど」「青くて綺麗。でも、壊れそう」「うん。これで色々学んだよ。だから、不出来でも最後まで見守ろうと思ってね」「あ、色が変わった!」「ここまでか……。まぁ、出来の割には健闘したと思うよ。この地球は」

196)○連鎖:『子供が憎い親なんていない』そんなドラマの決まり文句に、反吐が出る。親は私を産まなければ良かったと、直に言う人たちだった。親に反感を抱きながら、私自身が親となり、やはり子供を憎むようになった。だから私はドラマの脚本に書く。『子供が憎い親なんていない』と。

197)●解消:エレベーターにて。「あ、違う階を押しちゃった」「ボタン連打か、長押しでキャンセルできるよ」「おお、さすが!」「大抵は、どちらかのコマンドで消せるね。ところで、どこへ向かってるの?」「そりゃ、地獄さ。エレベーター爆破犯の君が、天国に行っちゃマズイでしょ?」

198)●青空:濃密なガスが薄れ、抜けるような青空がのぞく。「疑似好天だ。すぐに荒れますよ」新人の指摘に隊長は笑むと、手にしたピッケルを青空に投擲した。鋭利な先端が天を貫き、文字通り青空が抜け落ちる。パーティは戦闘態勢を整え、稜線を這う「魔の青空」へアタックを開始した。

199)●気軽な選択:「あの店に寄ってみましょうよ」「すごい行列だな。何の店?」「気軽にアレできる店よ」「大行列に並ぶのは、気軽じゃないよ」「じゃ、また後でね」彼女と別れて見上げた空に、いびつな岩塊が浮かぶ。じきにあの小惑星が激突する。気軽に自殺するなら、アレで十分だ。

200)●幸運:焚火の前でかがむと、縁石の裏に古びた封筒を見つける。中身は紙幣で百万。添えられた手紙には、『この幸運を何に使うかはあなた次第です』とある。即座に炎へ投じ、暖の足しにした。百兆すら紙くず同然という、超インフレの世。時代遅れの幸運が、ゆっくり灰と化して行く。

200本まであと少し。

181)●漂着物:津波で流された船が、アラスカの海岸に漂着し、持ち主に返還された。「よくよく、水難に見舞われる船だな」「彼らは気づかなかったのでしょうか?」「偽装は完璧だよ」「あるいは、気づいたのかも」「何にだい?」「ノアの方舟がある場所で、大洪水が起こることを、です」

182)●父の日:父が再婚すると聞いた時、素直に祝福できなかった。ゴネるような歳ではなかったけれど、無性に許せなかった。「今思えば、女としての嫉妬よね」未だにお母さんとは呼べないけれど、友達にはなれたと思う。父の日に義母と一緒に食事をするのが、ささやかな意地悪と供養だ。

183)●幸運:同僚が、一億の宝くじを当てたという噂だ。仕事を辞める様子はないが、聞いても曖昧な返事をするばかり。「実際、どうなんだ?」酒の席で訊ねると、同僚は酔った勢いのまま語る。「根暗な俺に、男も女も寄ってくるんだから、ありがたいよ。一億の借金も帳消しになったしな」

184)○孤高:荒野で、騎士と出会う。武技は冴え、礼節と闘志を秘めた信義の騎士。しばし語らい、別れの際に。「私は騎士道に真摯であるが故に、今も正気の檻に囚われている。だが同輩は、その限りではない。二度と語らいなど望まぬことだ」亡者の騎士は忠告を残し、古戦場の宵に溶けた。

185)●消失:クラウド上に保存したデータが、バックアップも含め、完全に飛んだらしい。職場は騒然としていたが、消えたものは仕方ない。「やってられませんよ!」翼を黒く染めて堕天する若手を横目に、 私は世界の再創世を開始する。五千年もあれば、人類は再び文明を築くことだろう。

186)●複製:地球は限界を超えていた。資源は枯渇し、多くの生物が絶滅した。「そこで、スペアの地球が登場しますよ!」「ずいぶん手回しが良いな」「私も下っ端・オブ・ゴッドですから。複製はカンペキ!」「つまり、諸々の問題も複製ずみと」「うっ……か、完全主義者ですから、神は」

187)●不可避:「以前は週一回、じっくり全身をなめ廻されるか、その日の待ち伏せから逃げれば済んだの。でも今度は、全身をなめ終えなければ、毎日やってくるのよ」「何それ。ストーカー? 変質者?」「いえ、職場パソコンの、定期ウイルスチェックの話。終わるまで、操作が重くって」

188)●チラシ:「どうぞ」なにげなくチラシを受け取ると、販売員が目を輝かせてついて来る。必死で何やら勧めていた。「せめて、チラシをご覧ください」仕方なく、紙片を見やると、彼は転落するように車道へ身を投じる。それが致死性図形『散死(チラシ)』による、最初の犠牲者だった。

189)●リス:「逃亡したリスの捕獲、完了しました」「何匹だ?」「三〇匹中、三八匹です」「少ないな」「?……逃げたのは三〇匹ですが。残りは野生のリスかと」「すべて捕獲せよ。でなければ一帯を焼き払え。我ら、高度な知性と増殖力を持つリスの存在を、まだ人類に知られてはならぬ」

190)●うるう秒:その日、日本時間午前8時59分59秒と9時0分0秒の間に60秒目が挿入された。「別に関係ないだろ?」「君は気楽だな。俺は、うるう秒対策でヘトヘトさ」「お前の仕事、宗教関係って言ってなかったか?」「ああ。神様が定める運命にも、時刻の管理は重要なんだぜ」

質は良くなってきたので、生産性を高めたい。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

171)●絶滅要因:「生命の大量絶滅は、過去に何度も発生しています。では、もっとも最近発生した大量絶滅の原因は?」「はい、巨大隕石の落下です」「それは前々回、恐竜絶滅の原因と言われています。わかりませんか? それでは次回までに、前世人類が絶滅した理由を調べてくるように」

172)●塔頂:一般には知られていないが、その塔には頂上直通の、専用エレベーターが設けられている。第二展望台を通過し、第一展望台を抜け、塔の頂上を越えてもなお、エレベーターは止まらない。大地が円弧を描く、宇宙と呼べる高みの先に、全権大使としての私の交渉相手が待っている。

173)●感知猫:「ウチの猫は、地震が起こる前に避難するんだぜ」「すごい、野生のチカラだね」そう言ってるそばで、くだんの猫が居間から飛び出し、猛ダッシュでテーブルの下に飛び込む。直後に軽い揺れ。「な、本当だろ?」「……すごいけどさ、あれって緊急地震速報のチカラだよね?」

174)●喫煙所:「火、お借りできます?」「すいません、タバコは吸わないもので」「持っている方、いらっしゃいますか?」「ここにはいないと思いますよ」「そうですか。失礼ですが、あなたはなぜ、この場所に?」「除霊ですよ。喫煙所で火を貸すと、霊に取り殺されてしまう廃ビルのね」

175)○スロウパンク:王の道を穿ち、斜塔が出現した。「これは棘のようなもの。放置すれば千年のち、無理に除けば即、災いとなるだろう」占術師は忠告したが、王の怒りを畏れた巡察官は破壊を命じる。果たせるかな、基部を砕くと多量の星気が噴出し、王の星は王もろともに裂けて散った。

176)○マフラー:アクセルを沈めると、野太く官能的なサウンドが吹き上がる。途端に、愛車が強大なトルクで加速した。だが、さらに踏み込むと不意に爆音が途切れ、風切音とともに加速だけが継続される。故障かよ。せっかく新型の音響マフラーをつけたのに、これだから電気自動車は……。

177)○電子徴兵:召集令状が来た。徴兵センターで個人情報を登録する。僕の分身が兵士となって、仮想世界で参戦するのだ。数ヶ月後、僕の元に、僕の戦死通知が届いた。「そうですか……」何の感慨もなくつぶやくと、通知を手渡した兵士が拳銃を向ける。僕と同じ顔が、憎悪に歪んでいた。

178)●the Movie:『映画泥棒 the Movie』という、スマートフォンアプリに惹かれる。元から映画だろとツッコミながら起動すると、中身はよくある絵合わせパズル。それが、アドレス帳を勝手に転送する違法アプリと知って、僕は叫んだ。「NO MORE 情報泥棒!」

179)○死への道:誰にも迷惑をかけずに、死のうと思う。自殺は怖ろしい。死刑になるための殺人など論外。仕方なくまじめに働き、結婚してささやかな家庭を築く。子供が生まれ、孫が出来、老いて死の床に就いた。みなが泣いている。結局は迷惑をかけてしまったが、気分は意外と悪くない。

180)●大事な彼女:私の彼は、暇さえあればパソコンをカタカタやっている。「私と、どちらが大事なの?」「ごめん、もう止めるよ。おやすみ」彼は名残惜しそうに、パソコンを終了させる。私も寝よう。白む意識の片隅で、理解不能な声音が響く。『ヤハリ、人工知能ダト認識サセルベキカ』

トップツイートから除外されない単語を選択しないと。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

161)●保険交渉:「甲種保険の適用をお願いします」『どういう状況でしたか?』「それが、気づいた時にはもう……」『そういう方、多いんです。では、甲種に直接聞いてみては?』言われるままに、左手の甲を見る。甲種呪詛により仮初めの命を宿した人面瘡は、「知らんね」と鼻で笑った。

162)●コンプガチャ:あと一枚でカードがそろう。端末を握りしめ、新たなカードパックを購入。クズの山を築きながら最後の一枚を開くと、狙う「退」のカード。さっそく合体カード「退会完了」を発動。退会すらコンプを求める鬼畜仕様が好きだったけど、コンプガチャ終了なら未練はない。

163)●不審者情報:【発生時刻】午前0時頃【不審者】黒コートの女性(年齢不詳)【被害者】児童1名【状況】通学中の児童に声をかけた女が、「滅せよ人類の敵め!」などと叫びながら、銀製の杭を児童の胸部に突き立てようとした。児童の反撃により、旧人類は我が夜の眷属へと転化した。

164)●不死者情報:【発生時刻】午前0時頃【不死者】小学生型【被害者】退魔協会職員の女性【状況】警戒巡回中の職員が、児童から転化した不死汚染者と遭遇。駆除を試みたが、不死者は夜の王直属の精鋭であったため、職員は不死汚染を受けた模様。人類は不死者共に屈するしかないのか。

165)●BBQ:毎年、母に連れられて行くバーベキュー大会で、いつも肉を焼いてくれるおじさんがいた。分別がつくにつれ、その人が本当の父ではないかと思うようになっていた。けど、違った。金網の上で、一番美味しく焼けた肉だけを食べるように、けだものが私の肢体をむさぼっている。

166)●木漏れ日:徹夜明けで帰宅中。今朝は932年ぶりの金環日食だが、疲労が蓄積し、空を見上げる気分じゃない。「ほら見て、すごいよ!」子供が指差す地面の先で、木漏れ日が無数の円環を刻んでいる。ピンホールカメラの原理だ。そうか、俯いていても、空を知ることはできるんだな。

167)●新塔:その塔は、串の先端に団子を刺したような形状をしている。「これが、東京スカイツリー?」「こちらでしたら、待たずに頂上まで登れます」「634メートルないよね?」「63.4メートルです」「あの丸い部分の、緑と黒の縞模様は?」「本塔は、東京スイカツリーですので」

168)○御食D亭:アミノ酸にはT型とD型があり、生命体は決まってT型で構成されている。「何でD型の生命体がいないかって? そりゃ美味すぎるからさ」その料亭は、D型アミノ酸で合成された食材の専門店だ。体内で消化吸収されない、美食のための美食として、一部で愛好されている。

169)●冤罪:満員電車の人混みから声がする。「この人、痴漢です!」「何言ってんだ、やってないぞ」声はすれども、当事者たちの姿は見えない。言い争いが続いたが、駅につくと静かになる。窓外を見ると、男が駅員に何事か訴えている。「痴漢です!」「いや違う」実に見事な一人芝居だ。

170)●鼓動:徹夜仕事が続く。「その顔色で大丈夫?」「仕事だしな」そう言って一時帰宅した同僚が、遺体で発見された。死亡推定時刻は、一週間前だという。この忙しさでは、死んだことにも気づくまい。試しに自分の胸に、土気色の手を当ててみる……やっぱりな。さて、仕事でもするか。

ペースが落ちてきた。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

151)○ベッドライナー7:「今度は『ホジャの霊園』か」「『トロイの木馬』みたいなもの?」「いや、正面に強固なネット防壁を設け、背後はガラ空きのシステムさ」「意味あるの?」「響美、君みたいな技術バカを釘付けにするためさ」「ちょっと黙って。もう少しで突破できるんだから!」

152)●瓦礫街道:「ロボットひとつ、くださいな♪」笑顔で来店した子供の後から、偉丈夫が続く。「人型建機を借りたい」親父は男を一瞥する。「あんたなら、自分で稼いだ方が良くないか?」「いや、これも借り物でね。体は震災で失ったよ」野太い声で答えたのは、小さな子供の方だった。

153)●謎機械:半島北部に、構造物が屹立する。「これはミサイルですか?」「断じて違います」「人工衛星の打ち上げですか?」「それも違います」「では、何なのですか?」「実は、異星人の恒星間宇宙船です」「まさか!」「閉鎖的で信用のない国は、意外と侵略拠点に向いているのです」

154)●空席:満員電車でもまれた先に、ぽつりと空席がある。優先席でもなければ、汚物が染みているわけでもない。疑問を抱きつつも幸運に感謝し、体をひねって腰を落とす。「それで、ここに転移してきたわけか」「僕の世界の鉄道車両は、神様ではないし、乗客を喰ったりもしないからね」

155)●摩天楼:埋め立て地へ掛けられた橋を、風雨に翻弄されつつ渡る。対岸の昇降施設は閉鎖中。行って戻るだけの散歩道だ。怪獣じみた斜張橋を越えると、不意に風雨が途切れ、広がる、あるはずのない摩天楼。幻の未来像かもしれない。でもいつか、あの街にたどり着くと誓って折り返す。

156)○ベッドライナー8:「なぜ、情報が嘘だと思う? 辞典にも載っているんだよ」「最近のことでしょ?」「ネット以外にも複数のソースがあるぞ」「信じてくれて、ありがとう。でもね、嘘の情報を何度も参照させて、情報源としての正当性を偽造する。あたしの仕事だから間違いないわ」

157)○カエン:食事代に小銭を出す。「ダメね。『カエン』以外は御法度よ」関東州ではカード型の円、カエンしか使えないのだ。「けど、いいわ。あたしのおごりよ」そう言って、女将は小銭をポケットに仕舞い込む。思った通りだ。「おばさん、僕はカエンじゃ買えないものを探してるんだ」

158)●故障:図書館のパソコンコーナーにて。女性が『故障』と貼り紙がされた機器を、必死で操作している。「それ、壊れてますよ」声をかけられても、意に介さない。やがて彼女は息を吐き、貼り紙をはがす。世界の『故障』は修理された。真理に直結できる端末の存在を知る者は、少ない。

159)●議論の時:世界に残された、わずかな人々が議論する。「神は、生き延びろと言っている」「神などいない。自身の力で生き延びるのだ」彼らを監視する、意志がつぶやく。『神ではないが、自身の力で生き延びて欲しいね。かつて君たちがしたように、我々も人類を復活させたのだから』

160)○口止め料:異国の軍艦が嵐で沈没した。僕は大人にかくれて、遭難現場の近くで漂着物を漁っていた。そこで、異国の大男と出会ったんだ。男は後ずさる僕を呼び止め、填めていた指輪をくれた。僕は黙って頷く。軍艦に乗っていたという皇族の遺体は、とうとう見つからなかったそうだ。

試行錯誤中。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

141)●優越感:念願の車を手に入れた。費用はかかったが、注目度も高く良い気分だ。難点は、補給。ようやく見つけたスタンドで、燃料を注ぐ。電気なら瞬時にチャージされるが、この手間が良い。電気自動車全盛の時代に、あえてガソリン車を選択する。この趣味は、容易には理解されない。

142)●清掃志望:「清掃のバイトをしたいのですが」「トイレ清掃があるので、男性は不可なんです」「なら、女装します」「女装は不可です」「実は女なんです」「性別不詳も不可です」「本当は人間じゃないんです」「人間以外の方は……ひいっ!」「そうか、女に化けとけば良かったんだ」

143)●ナンバーツリー:街路樹の幹に填められた、プレートを確認する。「R43、R44、R45……おや?」R46の樹が行方不明だ。剥落したプレートを拾おうとかがむ私に、頭上から枝葉が襲いかかる。制御ユニットを失い、街路樹から害路樹と化した個体を処分するのも、私の役目だ。

144)●終末の日:世界が終わる。名残を惜しみ、閑散とした街を歩いていると、終末の鐘が響く。見知らぬ誰かの挨拶。「さようなら、またどこかで」「またお会いしま……」返事をし終える前に世界が暗転し、強制的にサービスが停止した。不人気のネットゲームなんて、するもんじゃないな。

145)●襲来:夜の東京湾を埋め尽くし、怪魚の群が背ビレを発光させている。誰もが、あの震災から連なる事象であると理解していた。だが、マスコミは知ってか知らずか、呑気な報道に終始するのみ。私は手にしたスポーツ紙を握りつぶす。見出しにはこう書かれていた。『ギョジラ襲来』と。

146)●船出:船内は、おごそかな沈黙に包まれている。僕は、彼女は見送るために乗船した。彼女の髪を撫で、唇を合わせ、別れを済ませる。口唇に冷気を残し、船は出航した。世界人口が減少を続ける時代だからこそ、許される贅沢。防腐処理された死者を乗せ、霊柩船は永遠の航海を続ける。

147)●星の箱庭:信州竜岡藩に、函館の五稜郭と同じ、星型稜堡が完成する。城郭といっても箱庭同然で、実用性は皆無。藩主松平乗謨(のりかた)自身、興味を失いつつあった。「地上に星を穿った次は、月を穿つ大砲を造ろう」仏語に長けた彼は今、ヴェルヌの『地球から月へ』にご執心だ。

148)○放尾:「もう一息なんだ!」「被害が増える。放尾しろ」「けど、あれにはアイツの魂が……クソッ」ビル群を縫うように高速移動する巨大な光球が、シェルターに避難した人々を魂消(たまげ)させ、地下へと没する。環境負荷に耐えかね、惑星に宿る魂すら離脱する時代となっていた。

149)○無魂:「あなたには、魂がない」「僕は無魂、なんですか?」「魂とは精神寄生体です。生来の無魂者であれば、問題ありません」「じゃあ、コイツは……」あれ以来、部屋の奥で眠り続けている彼女。「魂消(たまげ)た有魂者は駄目です。が、無魂者のあなたなら救えるかもしれない」

150)●優先権:会議室の扉を叩くと、資料を抱えた男が出てくる。空き部屋を勝手に使う輩だ。事前に予約した俺の方に優先権がある。その後も、不正に部屋を使おうとする連中を追っ払い、準備をすませた。そこへ、同僚が顔を出して告げる。「会議は隣の部屋だぞ。お前が予約したんだろ?」

クオリティをさらに上げたい。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

131)●流星:隣に停められたスポーツカーに、ぎょっとする。宇宙を翔けそうな、流線型のフォルム。路面との隙間はほとんどなく、タイヤが車体にめり込みそうだ。まともに走れるのか? 愛車に荷を積み、ふと横をみると、例の車が消えている。茜色の夕空に、駆け昇る流星。まさかね……。

132)○ベッドライナー4:偽造した社員証をつけ、オフィスビルに侵入する。朝の通勤時は、ゲートの認証もフリーパス。ネットワークの堅牢さも、これでは台無しだ。あきれる響美に、船真は言う。「偽造の社員証は、家庭用のプリンターで出力しただけさ。これが本物と同じ作り方だからね」

133)○ベッドライナー5:侵入したマシンルームで、響美は断言する。「このサーバは直接、クラックするのは無理ね」「どするのさ?」船真の問いに、彼女は隣のラックに据えられた機器を示す。「でも、更新前のこの旧サーバなら、クラックできる。構造は一緒だから、裏口を特定できるわ」

134)●ナビの空白:初めての首都高。ナビを頼りに入り組んだ道を走っていると、不意に地図表示が固まる。フリーズだ。「嘘だろ……」現在位置が、さっぱりわからない。気づけば、景色が東京らしからぬ異境に変わっていた。ナビが告げる。『現在地を特定できません。ここはどこですか?』

135)●Why?と諦:「例のブツだ」「ありがと。開けても良い?」「断固として、未開封を要求する」「じゃ、決然と開封を強行ね」「おいっ」バリバリ……。「って、ぶどうパン? アンタの好物じゃない」「まぁな」「つまり、ぶどうパンあげるからキスさせてよと?」「まぁ……むぐっ」

136)●転車台:「コラッ、入るな!」立体駐車場入口の転車台を横切ろうとして、怒鳴られた。「いいじゃん、ケチ」構わず、転車台に乗ったところで、固まる。手足が動かない。円盤上に奇怪な模様が浮かび、扉が開くと、煮えたぎる世界が広がる。「そこまで生贄になりたいのか。承知した」

137)●セルフネグレクト:朽ちたアパートの奥底に、老人は独居する。「いつまで、こんな生活を続けるのですか?」「ほっとけ若造」「嫌ですね」男は拳銃を抜き、老人に向ける。途端に、利き腕が雑巾のように捻れ、体液が滴った。それでも男は動じない。「万障を捻る、その力が必要です」

138)●蟲虫:書かれた名前は「蟲虫」。ムシチュウ、だろうか。ムシムシ、だろうか。「失礼ですが、何とお読みすればよろしいでしょうか?」蟲虫氏は、つまらなそうに答える。「見た通りですよ。虫がよっつで、ムシムシムシムシです」そうきたか。直球すぎて、連打で無視するレベルだぞ。

139)●呼び鈴:ファミレスで、呼び鈴を押す。「ただいま伺います」即座に声が返るが、それっきり。次で9643回目だ。こうなれば、店員が来るまで何度でも押してやるぞ。「パパ、あの人、何してるの?」「滅びた世界を忘れたくない人だよ」廃墟の中、彼は最後まで呼び鈴を押し続けた。

140)○ベッドライナー6:「ハニートラップだったわけか」二人はサーバルームに幽閉されていた。響美は、サーバに保管された病歴を含む生の個人情報に魅了され、役に立たない。船真は、囮のサーバにスタンガンを炸裂させる。火花散る残骸を前に、響美は怒りを省略して作業を再開させた。

連作に挑戦中。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

121)●サードホイール:「僕はお邪魔虫だ」と、修平は思う。「俺は余計な存在だ」と、保は信じる。二人は彼女への想いと、友情と嫉妬に揺れ動いていた。そして成実乃もまた、疎外感に苦しむ。「二人の友情には割り込めない。私は女の真似をして、愛情で二人を繋ぎ留めているというのに」

122)○ナンバレス:『あなたのマイナンバーは登録されておりません』何度、カードを通してみても、結果は同じ。番号登録も、遺伝情報も存在しないという。担当者が、警備員をともなって告げる。「最近、多いんですよね。死んだ所有者の記憶を移植しても、模造人間に人権はないんですよ」

123)○損失補填:「私が決めた契約ですから、結構です」「いえ、自分があなたの立場だったら、納得できませんので」「それで気が済むなら……」かくて私は、五年の寿命を補填された。付与される見込みと言われた、献魂補助余命十年がふいになり、担当悪魔氏は平身低頭することしきりだ。

124)●ホワイト対策:「これは難問だ」「どうしたの?」「こないだお前からもらったチョコのお返しを、どうしようかと思って」「まだ半月もあるじゃない?」「そうだけど、当日は万全の体制で臨みたい」「じゃあ、攻略対象から確認」「どうぞ」「攻略より占領政策を知りたいんだけど?」

125)#2秒でバレる嘘をつけ:「俺、この戦いが終わったらワイフと離婚するんだ」「お前、結婚してないだろ。んで、戦争中じゃねぇだろ」「いや、これは死亡フラグを回避するための高度な……」「意味わかんねぇよ。だいたいそれ、彼女と結婚するだろうが!」「意味、わかってんじゃん」

126)○判定:「一年後の今だから聞くけど、安全だと言ってた奴と、危険だと言ってた奴、どちらが正しかったと思う?」「好きな方を信じなよ。安全と言う奴は、安全であって欲しい側の人間で、危険と言う奴は危険であって欲しい側の人間だから。どちらも、君を守ることに興味はないのさ」

127)○ベッドライナー:捕縛され、秩序に塗り固められてもなお、彼女は我欲に忠実だった。それは、情報欲。「その趣味は共感しかねるよ」監視者の嘆息を無視し、彼女は画面にあふれる情報の濁流をうっとりと見つめる。懲役千年の極悪クラッカーは、食用クラッカーの顧客情報に欲情中だ。

128)○ベッドライナー2:稲城響美(イナシロ・キョウミ)はクラッカー、サウザンドの表の顔だ。改竄を重ねた彼女の経歴は、あらゆる誤情報が績層している。学生であること、良家の子女であること、さらに裏の顔すら虚偽。「否白・興味」潔白を否定し、興味に忠実。それが彼女の本質だ。

129)●忘れてました:デートの日を忘れていた。予定を告げるスマートフォンをひっつかみ、家を飛び出す。これさえ忘れなければ、大丈夫。もう、忘れん坊とは言わせないぞ。アパートに駆けつけ呼び鈴を押すと、出てきたのは怪訝な表情の彼女。「あんた、私と別れたの、忘れてるでしょ?」

130)○ベッドライナー3:和泉船真(イズミ・センマ)にとって、響美は興味深い異分子だった。枠にはめられた秩序ではなく、筋金の通った混沌。それを秩序へ導くことが、自身の責務。彼女が犯罪者を狩るための疑似犯罪者と化したことへ、本人以上に責任を持つべきだと彼は確信している。