死ぬまでには飛行船に乗らねばなるまい──いや、乗るまで死ねるか!
そう、固く心に誓っている飛行船の旅でありますが、大変にうらやましいツェッペリンNTによる空の旅の動画が公開されました。「飛行船は爆発しません」と、「飛行船は墜落しにくい乗り物です」というのは、世間の常識として定着させるべきです。
僕がこよなく愛する硬式の大型飛行船ですが、日本へも昭和4年8月にドイツの「LZ127 ツェッペリン伯号」が世界一周の途上で、東京の霞ヶ浦に寄港しています。当時の東京朝日新聞を見ると、その熱狂ぶりはすさまじいばかり。日本人記者が乗船し、船上から記事を送っていますが、見出しを読むだけでワクワクがノンストップです。
世界一周の壮途江 ツエ伯號晴れの首途 けふ午後一時三十九分 レイクハースト出發
ツエペリン伯號 日本へ向けて出發す けふ午前零時三十四分 群衆熱狂的歓呼の中に
明け初めた夏空高く 流るゝ如き巨船の姿 無造作な出発の光景
あゝ何たる壮観ぞ! 明月輝やく國境越に 静かに眠るボルガ河上空を船は快速力で進む
猛火うづ巻き起る 山火事を眼下に見る ウラル山脈を超えつゝ シベリアの痛烈なる第一歓迎
大持ての密航者 それは一匹の黒ねこ ヘイ女史大はしゃぎの一幕
北極圏近くを飛んで 極光の美しさを見る 毛皮を着て朝の食卓へ
ツエ伯號上から この次は猛獣狩りに飛行船を操出したい
北海道を横断し 太平洋岸を南下す 駒ヶ岳上を突破して ツエ伯號霞ヶ浦へ
高窓に電燈かゞやき 浮城の如き大格納庫 珍客を迎ふる準備全く成り 夜明けを待つ大緊張
ツエペリン伯號 帝都上空に現る
けふ全市を挙げて ツエペリン・デーと化す 三百萬の瞳が大空を仰いで 待ちこがれる勇姿!
巨大な船體が卅秒で 鮮やかなる着陸ぶり 観衆の感激に取り巻かれつゝ 大格納庫に納まる
熱誠と感激に燃えて 巨人を太平洋に送る 萬雷の歓呼日比谷を壓せる 本社主催の大送別會
ツエペリン伯號 今暁霞ヶ浦出發 北太平洋を突破して米國へ 午前四時壮途に
ツェッペリンNTでの遊覧飛行ももちろん体験したいけど、やっぱり大型硬式飛行船で優雅に大陸や大洋を渡る旅をしてみたいものです。燃えるぜ!←燃えちゃダメ