神事ゆく死不夜 得美数王咲き 西覆い
夢差し越す儀 進化は先 陽光は魔 堡導が野火が使徒通過 突羽化翁鮒 鬼多寡枕 禍真暗図誌
──復活を祈念して。
神事ゆく死不夜 得美数王咲き 西覆い
夢差し越す儀 進化は先 陽光は魔 堡導が野火が使徒通過 突羽化翁鮒 鬼多寡枕 禍真暗図誌
──復活を祈念して。
白石でまぶされた舗装路は、桜吹雪と縁がない。
古刹へといたる路、灰色の電柱を背に、ちっぽけな桜の樹が咲く。
盛りを過ぎた、枝先は緑がち。
虚栄と朽ちはじめた、白紅の衣。
紅色の寂寥を晒す、翼をもがれた花托。
ちっぽけな樹は、今年もちっぽけな満開を終えていた。
背に立つ電柱が悪いのか。
幹は中途で断たれ、枯死した昇天の穂先が、ぞろりとした芯を晒している。
いまは、幹の中腹より分かたれた先から、ちっぽけな春の証を示すのみ。
真正直に育めぬまま咲き、きたる春。
声高に誇れぬまま散り、おわる春。
ちっぽけな桜は、生きている。
ちっぽけな葉に、明日を託して。
ちっぽけな命が、息づいている。
ちっぽけな春よ、またね。
水槽で縛られた、ロブスターより紅くない。
カップに満たされた、コーヒーよりも淡い。
重くくすんだ陸海空は、黒胡麻の粉を溶き混ぜた牛乳のように、ざらつきながら深みを増す。
かわりとばかり、ぬくもりを秘めた輝きが、陸海空を染め上げていく。
玻璃のあちら。
ぬくもりは、橋の上で彗星の尾を引き、橋の下で銀河がぎらつく。
玻璃のこちら。
ぬくもりは、天井から宇宙船を吊り下げ、天井から星座をうがつ。
黒胡麻の粉が泥濘と化し、仕舞いには、ぬくもりの宇宙的背景と化す。
わずか、両眼をおぼろげな感覚に任せると、積層された次元の秩序が明らかになる。
野暮はよそう。
ぬくもりの宇宙が、玻璃のあちらこちらで再統合される。
ふとコーヒーで満たされる、干されていたカップ。
ぬくもりの雫は、これぞロブスターの紅さ。
迅速に干される、赤黒い液とともに、終焉を迎える、ぬくもりの宇宙。