『総員玉砕せよ!』ネバーギブアップの末路

悲劇と喜劇が表裏一体となった玉砕のドラマです。

水木しげる著『総員玉砕せよ!』を読む。ちょうど、朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で語られている、戦争体験を元にした長編マンガ。妖怪マンガが有名な水木先生ですが、実体験があるだけに、戦記マンガも迫力がある。太平洋戦争末期、南太平洋のニューブリテン島にて、追い詰められた日本軍が2度のバンザイ突撃の末に玉砕する様を描く、実話に脚色を加えた作品です。数ヶ月後には敗戦が確定するというのに、無駄に命を散らすこともなかろうにと、結果論では言えますが、当時の状況では、そうも言っていられない。かと思えば、下っ端の兵隊は不足しがちな食料を調達すべく、芋を掘ったり、バナナを取って盗られないよう地面に埋めたりと、たくましく生きている……かと思いきや、ワニに食べられたり、魚を喉に詰まらせたりと、戦闘以外の理由で命を落としたり。悲劇と喜劇が表裏一体となった玉砕のドラマです。ネバーギブアップ精神だけで勝つ気のない、死ぬ気満々の指揮官だけは勘弁な。