「ゲゲゲの女房」タグアーカイブ

淡々と独裁者『劇画ヒットラー』

いちばんいいのはしゃべり方を心得ている労働者だ、脳ミソはたいして必要としない。

水木しげる著『劇画ヒットラー』を読む。第一次世界大戦後、売れない画家だったドイツ人青年が、かの悪名高き独裁者となり、破滅するまでを描く。記録をもとに淡々と描写されるため、英雄ではなく、悪魔でもない、当時の社会情勢が産んだ、いびつな権力者として描かれている。

水木しげるの戦記マンガというと、戦艦の描写には気合いが入っているけど、戦車はいまいちおざなりな印象があるのだけれど、本作は戦車もきちんと描かれてますな。

絵物語で戦争体験『水木しげるのラバウル戦記』

カラーイラスト有り。

水木しげる著『水木しげるのラバウル戦記』を読む。自伝的作品ではありますが、マンガでもエッセイでもない、従軍中に書いた絵に文章をつけた絵物語風の読み物です。南方戦線に従軍した著者が、現地の人々と交流しながら上官に殴られまくり、敗走しまくりの物語。命を危険にさらす環境でも、しぶとく絵を描き現地民とコミュニケートする様に、執念というか独特の美意識を感じました。

自伝系の作品はあらかた読んだので、そろそろ別なやつに手を出してみるかな。

『ボクの一生はゲゲゲの楽園だ―マンガ水木しげる自叙伝』を読む

フハッ!

水木しげる著『ボクの一生はゲゲゲの楽園だ―マンガ水木しげる自叙伝』を読む。新品の本が売ってなかったので、iPadを使用したeBookの電子書籍版にて全8巻を読破。前にも書いたけど、電子ブックビューワーの使い勝手がイマイチ。実用には耐えるけど、紙の書籍と同等になるには、もうふた息ぐらい必要ですな。

本書は、中盤すぎまではエッセイ等でも書かれている自伝的な内容ですが、後半になるとネタが尽きたのか、実体験に妄想がプラスされたファンタジー展開に突入。これはコレで面白いのだが、自伝かと問われると「?」な感じ。自伝的なエンターテイメントとして楽しむのが正解でしょう。

貧困無情『ビビビの貧乏時代 いつもお腹をすかせてた! 』

なめちゃんには気をつけろ!

水木しげるさんの自伝的マンガ『ビビビの貧乏時代 いつもお腹をすかせてた! 』を読む。以前に読んだエッセイ『ほんまにオレはアホやろか』に書かれている体験談も混じってますが、基本は実体験を元にしたフィクションということらしい。のんびり、地道に、粘り強く生きてきた人生を感じさせる短編集。『ゲゲゲの女房』が最終回を迎え、ちょっこし寂しい方におすすめです。

ありがとうって伝えたい、連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』最終回

はじめて最初から最後まで観たよ。

朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』が最終回。隻腕の妖怪マンガ家、水木しげる先生の元に嫁いだ、ノッポの奥様奮戦記。正直、こんなに話題作になるとは思わず、第1話から観てました。貸本マンガ時代の苦労から、売れっ子マンガ家になった苦労と、苦労のネタは尽きませんが、それでも前向きに過ごす一家を堪能させてもらいました。終盤は、苦労ネタがなくなってきて身内の死が何回か描かれましたが、それすらも惜しみ、悲しんでくれる人が周囲にたくさんいるという、不幸ながらも暖かみのあるもの。色々あるけど、この世界はこれからも続いていくのだと感じさせる、前向きな最終回でした。

ドラマだけでなく、原案エッセイや水木先生のマンガやエッセイも同時に読んでいたので、なおのこと作品世界を深く理解できた。実体験以外の戦記マンガも面白かったです。

あと、この世界の水木夫妻は、白髪以外は老化しないんだね! そりゃ、妖怪と出会ってもビビらないはずだ。

ゲゲゲの亭主サイド『ほんまにオレはアホやろか』

普遍性のあるアホやろね。

水木しげる著『ほんまにオレはアホやろか』を読む。ご存じ、水木先生の自伝です。幼少期から学生時代、兵役、紙芝居作家、貸本マンガ家、雑誌マンガ家時代を早足で活写。主に、テレビドラマ『ゲゲゲの女房』よりも前の時代が描かれていて、よりドラマも楽しめます。

どんなに貧乏でも、認められなくても、愚直に創作活動を続ける姿勢は、好きこそものの上手なれなんて常套句では表現しきれない執念を感じる。創作者としての信念と誇りを胸に、でも理想は無理せずのんびりと、過酷な日々を送られたのだなあと思います。

なんか、この方はたとえ21世紀の現代に生まれたとしても、飄々と自分のペースでマンガを描いていそうな気がする。画材が、ペンからiPadになってても、芯は揺るがない、そんな感じ。

『総員玉砕せよ!』ネバーギブアップの末路

悲劇と喜劇が表裏一体となった玉砕のドラマです。

水木しげる著『総員玉砕せよ!』を読む。ちょうど、朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』で語られている、戦争体験を元にした長編マンガ。妖怪マンガが有名な水木先生ですが、実体験があるだけに、戦記マンガも迫力がある。太平洋戦争末期、南太平洋のニューブリテン島にて、追い詰められた日本軍が2度のバンザイ突撃の末に玉砕する様を描く、実話に脚色を加えた作品です。数ヶ月後には敗戦が確定するというのに、無駄に命を散らすこともなかろうにと、結果論では言えますが、当時の状況では、そうも言っていられない。かと思えば、下っ端の兵隊は不足しがちな食料を調達すべく、芋を掘ったり、バナナを取って盗られないよう地面に埋めたりと、たくましく生きている……かと思いきや、ワニに食べられたり、魚を喉に詰まらせたりと、戦闘以外の理由で命を落としたり。悲劇と喜劇が表裏一体となった玉砕のドラマです。ネバーギブアップ精神だけで勝つ気のない、死ぬ気満々の指揮官だけは勘弁な。

『ゲゲゲの女房』の原案自伝を読んだ

武良布枝(むら ぬのえ)著、『ゲゲゲの女房』を読む。

同名の、朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の原案。妖怪マンガで有名な水木しげるの妻としての視点から、半生を描いた自伝です。原作ではなく原案というのがミソで、書かれていることは断片的で、正直、テレビドラマほどは洗練されていません。しかし、貸本マンガ時代から、苦しいながらも楽しく暮らしてきた夫婦の息遣いが、行間から漏れ聞こえてくる感じ。こういう人生が送れたら素敵でしょう。

脚色されたテレビドラマ版『ゲゲゲの女房』の元ネタを紐解く、副読本としてもおすすめです。