文字のもたらす弊害は、古代アッシリアの昔から知られている。
Nintendo DS『財団法人日本漢字能力検定協会公認 漢検DS3デラックス』で漢字の勉強をしています。漢検の資格を取りたいわけではなく、漢検が取れるくらいの漢字知識がほしいのです。痛感するのは、読めるし意味もわかるけど、書けない文字が多いこと。ワープロでのテキストエディットに慣れすぎたためか、文字を書こうという意識が鈍化しています。
文字には精霊が宿る。
これは、中島敦の短編『文字禍』にでてくる概念。よくよく見れば、単なる線の集合でしかない文字に、固有の意味をあたえているのが文字の精霊。驚くべきことに、人間が文字を使っているのではなく、文字の精霊に人間が使われているというのだ。
近頃人々は物憶(ものおぼ)えが悪くなった。これも文字の精の悪戯(いたずら)である。人々は、もはや、書きとめておかなければ、何一つ憶えることが出来ない。着物を着るようになって、人間の皮膚(ひふ)が弱く醜(みにく)くなった。乗物が発明されて、人間の脚が弱く醜くなった。文字が普及(ふきゅう)して、人々の頭は、もはや、働かなくなったのである。
精霊が宿るのは、文字だけとは限らない。ワープロの精霊やゲームの精霊、ケータイの精霊だっているにちがいない。便利なツールの登場ははたして、人類を進化させているのか退化させているのか、征地球論レベルの問題です。
それはもかく文字の精霊さん、精霊さん、僕に漢検二級相当の漢字力を、おあたえくだされ!
このブログを見て、なんかどっかで、同じ事を見た記憶があるな……と思ったんですね。いや、文字禍をみれば、だいたいそう思うんですが。
それで、やっと気がつきましたよ。
以前おすすめした「短編小説のレシピ/阿刀田高」にあったんですよね。ほとんど同じ趣旨で。久しぶりに読んで、やっぱこの本はいいっすねー。おすすめ。
>酒#童人さん
中島敦は教科書に『山月記』が載っていたのがきっかけで好きになり、『文字禍』をふくめて著名な作品は読んでます。
ご紹介いただいた『短編小説のレシピ』は先日読了しました。
本書で『文字禍』が取り上げられてたので、ひさびさに再読した次第です。
真似したつもりはないのですが、ネタが被ってましたか。
そうなんですか。いや、これまた失礼しました。
中島敦の作品では、『牛人』が好きですね。
むろん、山月記は言うに及ばずですが。
>酒#童人さん
僕は『李陵』が好きですね。
はじめて書いた小説は、「矛盾」の故事をもとにした短編でした。
中島敦の影響をモロに受けてます。