洗浄のピアニスト
WOWOWで放映していた、「戦場のピアニスト」という映画を観る。
第二次世界大戦中のポーランドを舞台に、ユダヤ人のピアニストがナチスの迫害から逃れてなんとか生き延びる話。「○○のピアニスト」というと、「海の上のピアニスト」という映画を思い出すのだが、どちらかというとこの映画は「戦時中のユダヤ人」という感じか。ピアニストが主人公ですが、目立つことをすればナチスに捕まってしまうので、中盤の逃亡生活中は、ほとんどピアノを演奏するシーンはなし。むしろ、ナチスの残酷な虐殺シーンに気合いが入っている。当然ながら、人を虐げる立場にも、虐げられる立場にもなりたくないなと思った。
ただ、どうもこの映画、主人公以外の人たちは虫ケラのように殺されていくのだが、主人公自身は、妙に優遇されてる気がする。運が良かったといえばそれまでですが、名も無きキャラが些細なことで頭を撃ち抜かれてしまうのに、主人公だけはミスをしても鞭打ちだけで済まされたりすると、ちょっとずるい気が。隠れ家で皿を落として隣人にバレるとか、もらったナチス軍人のコートを着込んだまま連合側の人に話しかけて撃ち殺されそうになるとか、不幸な身の上には同情するけど、いくらなんでもドジすぎだろうと思うこともしばしば。
リアル志向のはずの残酷シーンも、血は流れても、なぜか五体満足な人々が転がってるだけ。手足や首が千切れたり、脳みそや内蔵をブチまけてたり、腐敗してウジやハエがたかってるような、当然あるべき描写はなし。一見、残酷なシーンを容赦なく描いているようでいて、本当に不快な部分は誤魔化してるように感じた。なにもかも映像で表現する必要はありませんが、それを感じさせる画面作りはできたはず。直接描写にこだわったせいで、かえってリアリティを感じなかった。残酷だけど清潔すぎ。この作品の元になったという、実在のピアニストの体験がどんなものだったのか想像しながら観てた。
これを十代の頃に観たら、かなりトラウマになるとは思うけどね。