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──2000.08.25── ■大人も子供もおねーさんも、エンディングまで泣くんじゃない
8月22日に、Nintendo64で発売予定だったソフト、『MOTHER 3 豚王の最期(MOTHER 3)』が発売中止になりました。
……って、ゲームをしない人には何のコトやらわからないでしょうから、簡単に説明します。 『MOTHER』シリーズは、任天堂から発売されたRPGシリーズで、コピーライターの糸井重里さんが企画、監修されました。 普通、有名人が関わったゲームというのは、名前だけ貸してあとはゲーム会社の人が勝手に造るゲームがほとんどです。 でも、MOTHERシリーズの場合、糸井さんがシナリオを書き、実際にプログラムを組んだりはしないにせよ、完成するまでバッチリ監修したという、本気のゲーム。 前2作は、アメリカふうな現代世界を舞台に、少年が宇宙人の侵略と戦うために大冒険!……て感じかな? ビジュアルは、スヌーピー(ピーナッツ)に出てくるような、味のあるカワイイ系で統一されており、殺伐とした感じは皆無。 バットで敵を殴って改心させるのが、ホントに殺伐としてないかは、議論の分かれる所でしょうが。(笑) 初代「MOTHER」はファミコン、「MOTHER2」はスーパーファミコンと出て、次はNintendo64で発売……というハズだったのですが、とうとう発売中止が決定してしまいました。 詳しい経緯については、糸井さんのウェブサイトである「ほぼ日刊イトイ新聞」上の「樹の上の秘密基地」というコーナーで紹介されています。 任天堂の宮本茂さんと、プロデューサーの岩田聡さん、糸井重里さんの鼎談は、ボリューム満点。 雑誌では紹介しきれないであろう、膨大な対談内容が収録されてます。 さすがは、インターネットなり。 と、概要を説明した所で、僕個人の感想を述べさせてもらいます。 まず僕は、MOTHERシリーズが、とても好きです。 ファミコン時代からプレイしてきたゲームだけに、MOTHERシリーズには深い思い入れがあります。 だだっ広いフィールドを、ワケもなくさまようのが好きだし、テレポートをわざと失敗(自爆)させて距離を稼いだり、好きなモノは何?と聞かれて「さりげなく」と答えたら、必殺ワザの名前が「PKさりげなく」になったりしました。 フライングマンは、知らないウチに死んで墓標が立っていくなとか、グミ族はどせいさんよりキャラが弱いなとか、サマーズの気怠い雰囲気が好きだなとか……あぁっ、1と2がゴッチャになってます。(スマヌ) 初代「MOTHER」のサントラCDは、僕が最初に購入したCDタイトルであり、今日までで一番、何度も聴いたCDでもあります。 このCDのアレンジバージョンが素晴らしかったため、スーパーファミコンの音源を使用した「MOTHER2」のサントラは、僕的にイマイチでした。 これは攻略本にも言えることで、初代「MOTHER」の公式ガイドブック、「マザー百科」は、まるで観光ガイドのような体裁になっており、純粋に眺めるのが楽しい本になっています。 「MOTHER2」の攻略本も期待してたんだけど、やっぱイマイチな印象だったなぁ。 久美沙織さんの小説版も、忘れてはいけません。 僕は基本的に、ゲームやアニメのノヴェライズは嫌いなのですが、MOTHERシリーズに関しては別。 1も2も、作家的にMOTHERというゲームから受けたインスピレーションを、小説という形に昇華する、「プロの作家が、好きな作品をノヴェライズする」という恵まれた仕事に、よい結果を出しています。 なんかこう書いていると、MOTHERというゲームに関しては、ゲームはもちろん、その周辺も含めた総合的な意味で、楽しみにしていた気がします。 ゲームとしては、MOTHER2の方が印象深いんだけど、総合的なパッケージとしては、MOTHER1の方がインパクトがあったかな? MOTHER3が出ないというコトは、サントラCDも、攻略本もノヴェライズも出ないワケです。 多くの人がそうであるように、MOTHERというタイトルのゲームが出ないからといって、悲嘆にくれるほどのコトではありません。 せいぜい、「楽しみが1つ、減った」というぐらい。 ……それでもやっぱ、僕は残念でたまらない。 MOTHER 3は、従来のモノとだいぶ毛色が違うようなので、仮に発売されたとしても、僕が期待するモノとは違ったかもしれません。 てゆーか、「豚王の最後」ってナニ?……「キマイラの森」がサブタイトルじゃなかったの?というのが発売中止の第一印象だったりするし。(苦笑) ……なんでも、途中で変更になったのだとか。 64だけに、表示が三次元になり、画面写真から受ける印象も、前作までとはだいぶ違う。 むしろ、ファンが期待するモノとは違った面白さを提示してくれるのでは?……という期待すらありました。 それが正しいかどうか、見極める機会が失われたコトは、間違いありません。 今回の決定は、現在開発中だったNintendo64版のMOTHER 3が発売中止になったというコトであり、永久にMOTHERの名を冠するタイトルが出なくなったというワケではないようです。 壮大な構想を立ち上げながら、ついに商品として結実することなかったMOTHER 3。 作家志望である僕自身、書き始めた小説をすべて書き上げているワケじゃない。 途中で放り出してしまった作品は、けっこうあります。 そういう時、社会的にも商業的にも責任のない僕なら、しらばっくれてしまう手もあるし、そうでなくても単に発売中止決定だけを発表してもいいのです。 今回はあえて、「MOTHER 3」は発売されません、ゴメンナサイという内容の対談を発表したのは、意義のあることだったと思う。 なぜダメだったかを、淡々と語る記事は、読み応えがありました。 一人のMOTHERファンとしても、同じ創作活動をする人間としても、発売中止は残念でなりません。 そして、ゲーム造りを続けられるのであれば、また新しい作品に「MOTHER 3」で結実しなかったエネルギーをぶつけて下さい。 月並みな感想ですが、いずれまたMOTHERと名のつくゲームが出ることを期待しています。 お疲れさまでした。 郁雄/吉武:記(2000.08.25)
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