■はじまりのボタン for Pomera DM10                      郁雄/吉武             2002 - 2008 www.astronaut.jp ※ポメラの付箋機能を利用したアドベンチャーゲームです ※「F6」キーで文字サイズを「小」にしてください ※「menu→書式」より行間設定を「小」にし、付箋文の設定を「★付箋文★」に設定してください(標準設定です) ※カーソルキーは使用しないでください ※選択肢がでたら、「F5」または「F3」キーを  押してください             →「F5」を2回押してください ■  ■  ■     ■  ■  ■  ■■■■ ■□■■■□■ ▲▲□■■■□■  ■ ■ ■  ■ ■  ■  ■ ▼▼  ■  ■  ■ ■ ■  ■ ■  ■  ■   □■■■□■  ■ ■ ■  ■ ■  ■  ■     ■  ▼  ■ ■ ■  ■ ■ ■■■□■    ■■■□   ■ ■ ■  ■ ■◆ ■  ■  ■◆ ■    ■  ■ ■  ■ ▼ ▼    ■■  ▼    ▼    ■■ ▼ ------------------ ボ タ ン -------------------- ●The Button of Fates Ver.1.0  for King Jim Pomera DM10   Ikuo/Yoshitake 2002 - 2008 www.asronaut.jp ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●Now Loading →「ctrl」+「F」で検索画面を開き、         カナ4文字「スキップ」を入力し、         「下へ」検索を実行してください ※「F5」キーを押さないでください ★付箋文★        ぼくの宝物を教えてあげる。      『はじまりのボタン』っていうんだ。      手のひらに収まる、ちょっと古びた箱。   ふたを開けると、中に1コ、ボタンがついてる。      ちょっと押してみたくなるでしょ?       でも、ぼくは押したことがない。    だって、この箱をくれた人がいったんだもの。 ★スキップ★→「F5」を1回押してください    いいかい? この『はじまりのボタン』は、     押すと君の住む世界が新しくはじまる、         魔法のボタンなんだ。       ただし、一度これを押すと、    古い世界は消えてしまい、二度と戻らない。         だからよく考えて、  本当に必要だと思ったら押すんだ……わかったね? ★付箋文★→「F5」を1回押してください    いつ、どこで誰に、それをもらったのか?        ぼくは何も覚えていない。      でも、これが何かはわかってる。      『新しく世界をはじめるボタン』   いつか、新しく世界をはじめる決心がつくまで、    僕はこのボタンを持っていることにした。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●少年の僕:1 僕が『はじまりのボタン』のことを思い出したのは、 学校生活がどん底になって、しばらくしてからだった。 いじめなんて珍しいことじゃない。 しばらく我慢すれば、そのうちおさまるさ…… そんなふうに思えた頃がなつかしい。 今の僕は教室の隅で怯えながら、 真剣にこの世界から消えてなくなる方法を考えている。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●少年の僕:2 僕は家で『はじまりのボタン』を見つけ、 持ち歩くようになった。 いつでも、新しい世界を始められるように。 ここ数日、僕はいじめられることより、新しい世界が どんな所なのか、そのこと方が気になっていた。 何が起こるのか……それとも何も起こらないのか。 それを考えはじめたら、いじめられることなんて 気にならなくなってくる。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●少年の僕:3 だけどやっぱり、僕はいじめられ続けていた。 しかも前より、ずっと非道く。 ボタンのおかげで気分が楽になったのが、 顔に出ていたのかもしれない。 連中に、今までで一番非道いことをされたとき、 僕は『はじまりのボタン』のフタを開き、 ボタンに指をかけた。 ●押してみる  →「F5」を1回押してください ○押さない   →「F3」を1回押してください ★付箋文★ ●少年の僕:4 カチリと音がした。 その音だけが、やけに響く。 自分が目をつぶっていたことに気づき、 恐るおそるまぶたを開く。 僕をいじめた連中はいない。 かわりに、ボタンをくれた、あの人が立っていた。 「結構、早かったね……」 その人は悲しげに笑う。 僕は、自分がすごく悪いことをしたように思った。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●少年の僕:5 「いや、君が悪いわけじゃない。  ただ、さすがに自分のこととなると……」 そう告げた、その人の顔は……僕自身のものだった。 「どうしても、  僕の失敗を繰り返してほしくなかったから、  もう一度チャンスをもらったんだ……  君が失敗したことよりも、  自分自身を見せつけられる方が辛かったよ……」 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●少年の僕:6 言っている意味がわからない。 だけど僕は、ここがどこか気づいた。ここは墓場だ。 僕たちは、墓場の真ん中にいる。 僕の姿をしたその人が、横を見る。 つられて動かした視線の先に、『はじまりのボタン』が供えられた墓があった。 なぜか僕は、その墓が誰の物であるか、 わかるような気がした。 墓に刻まれた名前は…… ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●はじまりのボタン● ゲームオーバー 最初へ戻る →「ctrl」+「alt」+「home(左矢印)」                  を押してください ○ボタンを押さない →「F5」を1回押してください                    Ikuo/Yoshitake             2002 - 2008 www.astronaut.jp                      ★付箋文★ ●青年の俺:1 結局、俺はボタンを押さなかった。 今にして思えば、押さなくて正解だったと思う。 喉元すぎれば何とやら……という奴だ。 社会人になった俺は職につき、恋人もできた。 あの時以来、『はじまりのボタン』は ずっと持ち歩いていたが、お守りみたいなものだ。 たかがボタン1個で、世界が変わるわけもない。 ★付箋文★スキップ→「F5」を1回押してください ●青年の俺:2 だが、このボタンを押したら何が起こるのかを 想像するのは、俺の密かな楽しみだった。 世界中の核ミサイル発射装置に繋がっていて ……なんてベタな展開以外にも、色々と考えてみた。 映画や小説、アニメやゲームなどで、 変革される世界を扱ったものを手当たり次第に 集めた時期もある。 世の中、色々考える奴がいるものだ。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●青年の俺:3 俺が失恋したのは、 ちょうどボタンについて考えるのに飽きてきた頃だ。 あらゆる世界の変革を考えつくした俺が、 予想だにしなかった展開で。 突然のことに呆然としていた俺が最初にしたのは、 『はじまりのボタン』を押そうとすることだった。 ●押してみる   →「F5」を1回押してください ○押さない    →「F3」を1回押してください ★付箋文★ ●青年の俺:4 カチリと音がした。 だが、何も起こらない。 世界は続いているし、俺以外の人間が消えた様子もない。 やはり、こんなものか。 ボタンに頼らず、真面目に生きろとでも言いたいのか。 有り難くて涙が出る。 しばらくして外が騒がしいのに気づいた。 何か叫ぶ声も聞こえる。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●青年の俺:5 とりあえず、テレビをつけてみた。 アナウンサーが、何かを必死で訴えている。 テロでも起きたのだろうか? ……いや、そうではなかった。 どうやらその放送は、 全面核戦争が起きたことを告げているようだ。 核ミサイルがこの国へも向かっているので、 地下へ避難しろと訴えている。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●青年の俺:6 俺は逃げなかった。 『はじまりのボタン』をカチカチ押しながら、 ミサイルが来るのを待っている。 ひょっとしたら、 たまたま自分がボタンを押したのと同時に、 核戦争がはじまったのかもしれない。 だが、俺のせいだと考えるのが妥当だろう。 確かめる時間もないが。 なぁに、核ミサイルごときで地球が砕けるわけじゃない。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●青年の俺:7 超高熱で焼かれ、放射能に満たされた世界で、 生き残った人々が再び生活を始めるだろう。 あるいは、人類以外の何かが 新たな繁栄を勝ち取るのか…… 普通のフィクションなら、そんな所だ。 せっかくなので、 俺は降り注ぐミサイルを見物するため、空を見た。 この世界ですることは、 それぐらいしか残っていないからだ。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●はじまりのボタン● ゲームオーバー 最初へ戻る →「ctrl」+「alt」+「home(左矢印)」                  を押してください ○ボタンを押さない →「F5」を1回押してください                    Ikuo/Yoshitake             2002 - 2008 www.astronaut.jp                      ★付箋文★ ●中年の私:1 私はボタンが押せなかった。 どれほど世界が変わることよりも、 何も起こらないことの方が恐ろしかったのかもしれない。 今ある現実が永遠に続くこともまた、 残酷な結末の1つなのだ。 そして私は、社会でもそれなりの地位を築いている。 結婚して子供もできた。 いじめられた時と同じで、 時が解決してくれる問題は意外と多いものだ。 ★付箋文★スキップ→「F5」を1回押してください ●中年の私:2 事業は順調で、責任ある立場にいる私は、 仕事に追われる日々。 あいかわらず、 『はじまりのボタン』は持ち歩いていたが、 ボタンを押した後の世界を想像することも なくなっていた。 共に、苦楽を共にした相棒といったところか。 いまだにボタンを押さないでいる自分に 苦笑しないでもないが。 こうなったら意地だ。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●中年の私:3 ある日、私は過労で倒れ、入院する羽目になった。 仕事は後任者が引き継いだので、 問題にはならなかったが、逆に言えば、 その程度の仕事だったのだ。 すべてが空しく思える。若い頃なら、 『はじまりのボタン』を押す所だ…… いや、本当に押してみるか? ●押してみる   →「F5」を1回押してください ○押さない    →「F3」を1回押してください ★付箋文★ ●中年の私:4 カチリと音がした。 世界が暗転する。 どこか暗い部屋にいるようだ。 いや、いるというより浮いているのか。 体が動かせない……というより、体がないのか? 私がパニックにならなかったのは、 若い頃にボタンを押した後の可能性を、 色々考えていたからかもしれない。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●中年の私:5 しばらく観察すると、どこからか光が見える。 私は、その光へと必死で意識を向ける。 長い時間をかけて、私はそれが何であるか 理解することができた。 光の向こうには、私がいた。 いや、私というより、私だった者というべきか。 そこでは、私ではない何かが、私として生活していた。 その顔には見覚えがある。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●中年の私:6 子供の頃、私に『はじまりのボタン』を渡した人間の顔。 そいつが私になっているのだが、誰も気づかない。 私は、そいつの言葉を思い出した。 『押すと君の住む世界が新しくはじまる』 ……ということは、私のことであると同時に、 この人物にとっても言えることだったのだ。 騙されたとは言えないが、フェアとも言えないな。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●中年の私:7 そして私は、自分が『はじまりのボタン』 そのものになってしまったことに気づいていた。 誰かがボタンを押すまで、私はここにいるのだろう。 特にすることもなかったので、私は近くを通る人々へ、 ボタンを押すよう念じ続けている。 これは、『新しく世界をはじめるボタン』なのだと ……嘘をついているつもりはない。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●はじまりのボタン● ゲームオーバー 最初へ戻る →「ctrl」+「alt」+「home(左矢印)」                  を押してください ○ボタンを押さない →「F5」を1回押してください                    Ikuo/Yoshitake             2002 - 2008 www.astronaut.jp                      ★付箋文★ ●老人のワシ:1 ワシは老いた。 『はじまりのボタン』を押さずに今日まで 生きてきたのは、果たして正解だったのかどうか。 いや、こうしてそれを悩む余裕があることこそが、 答えなのかもしれぬ。 静かに余生を送る今も、 ボタンを押すことを真剣に考えた日々を思い出す。 それは幾度かあったが、 どれも人生の転機となる瞬間だったと思う。 ★付箋文★スキップ→「F5」を1回押してください ●老人のワシ:2 ワシにとっては、ボタンを押さなかったことが、 自己を成長させてきたように思う。 新しい世界を始めぬかわりに、 新しい自分を発見してきたのだ。 『はじまりのボタン』が、 はじまらない世界で生きる力を与えてきたのは、 皮肉以外の何物でもない。 このボタンが何であれ、 ワシはこれに感謝すべきなのだろう。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●老人のワシ:3 そしてワシは、もうすぐ死ぬ。 医者が何と言おうと、余命は尽きているのだ。 ワシにはわかる。 だからこそ今、ボタンを押すべきかもしれぬ。 もはや世界の変革は関係ない。 だが、いま押しておかなければ機会は永久に失われる。 ワシは『はじまりのボタン』を…… ●押してみる   →「F5」を1回押してください ○押さない    →「F3」を1回押してください ★付箋文★ ●老人のワシ:4 カチリと音がした。それだけだった。 何日か過ぎたが、何も起こらない。 もっとも単純で、もっとも残酷な結末だった。 それでもワシは満足している。 しばらく後、主治医がワシにこんな話をした。 家族の頼みで黙っていたが、 実は不治の病にかかっていたというのだ。 ところが先日の検査では、 病状がすっかり回復しているという。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●老人のワシ:5 そして、ワシの人生は続く。 退屈な日々ではあったが、 生き続けられる幸せの価値もよく理解していた。 家族や知人が次々と去っていく中、 ワシは生き続けている。百歳を越え、 とうとう世界一の長寿者となった。 その頃からだろうか。 周囲の者が、ワシを奇異の目で見るようになったのは。 それも当然と言える…… ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●老人のワシ:6 ワシは、『はじまりのボタン』を押してからというもの、 老いが止まったままなのだ。 写真を見ても、あの頃とまったく変わっていない。 たしかにこれは、新しく世界のはじまる魔法だ。 誰もが夢見ながら、実現することのなかった、 不老不死という新しい世界への魔法。 他人には羨ましいのだろうが、複雑な心境だ。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●老人のワシ:7 二百歳を越えた今、 ワシはある研究機関で不死者として協力している。 当分死ぬ気はないが、 果たして自殺できるのかは気になるところだ。 若い頃のワシは、こんな結末を予想していただろうか。 今はもう、思い出せない。 記録でもつけていれば、検証もできただろうに…… こればかりは、不老不死でもどうにもならない。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●はじまりのボタン● ゲームオーバー 最初へ戻る →「ctrl」+「alt」+「home(左矢印)」                  を押してください ○ボタンを押さない →「F5」を1回押してください                    Ikuo/Yoshitake             2002 - 2008 www.astronaut.jp                      ★付箋文★ ●その後のわたし:1 わたしはボタンを押さなかった。 そして寿命で死に、目覚める。 装置から出ると、『はじまりのボタン』をくれた係員が、 お疲れ様と声をかけた。 記憶が急速に蘇ってくる。 そうだ……わたしはこの装置で、 異なる人生体験をしたのだ。わたしとは違う、 ある男の一生。奇妙な感覚だ。 ★付箋文★スキップ→「F5」を1回押してください ●その後のわたし:2 わたしは街を歩いている。 それが見慣れた街並みであることに 変わりはなかったが、異なる自分の記憶が、 その街並みに驚愕しているのが面白かった。 そして考えるだろう。 どうして『はじまりのボタン』が、 途中で元の世界に戻るためのスイッチだと 思いつかなかったのだろうかと。 あらゆる可能性を検討したというのに。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●その後のわたし:3 種を明かせば、実に簡単なこと。 あの装置で異なる人生を体験している間、 そこが仮想世界であることと、 ボタンの効果についてだけは、絶対に思いつかないよう、 精神活動を調節されていたのだ。 世界そのものが、正解がわからないように造られている。 必死でボタンの正体を考えていた、 あの男には気の毒なことだけど。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●その後のわたし:4 ふと、わたしは自分が、 あの世界で見慣れた箱を持っているのに気づいた。 何かの冗談か、それともまだ例の装置に入っているのか、 それとも…… もうどうでもよかった。 何が起ころうと、起こるまいと、 そこがわたしの生きる世界なのだから。 わたしはフタをあけ、何かの確信を込めて 『はじまりのボタン』を押す。カチリと音がした。 ★付箋文★→「F5」を1回押してください ●はじまりのボタン● ゲームオーバー 最初へ戻る →「ctrl」+「alt」+「home(左矢印)」                  を押してください      ------------おしまい-----------                    Ikuo/Yoshitake             2002 - 2008 www.astronaut.jp                      ★付箋文★