●はじまりのボタン●
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結局、俺はボタンを押さなかった。

今にして思えば、押さなくて正解だったと思う。喉元すぎれば何とやら……という奴だ。

社会人になった俺は職につき、恋人もできた。あの時以来、『はじまりのボタン』はずっと持ち歩いていたが、お守りみたいなものだ。たかがボタン1個で、世界が変わるわけもない。