●はじまりのボタン●
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私はボタンが押せなかった。どれほど世界が変わることよりも、何も起こらないことの方が恐ろしかったのかもしれない。今ある現実が永遠に続くこともまた、残酷な結末の1つなのだ。

そして私は、社会でもそれなりの地位を築いている。結婚して子供もできた。いじめられた時と同じで、時が解決してくれる問題は意外と多いものだ。