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コラム
──2003.01.09──
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2003年1月9日(木) 【コラム】ゼルダの伝説 風のタクトレビュー
 ゲームとしては十分遊べる水準だけど、
 「ゼルダの伝説」最新作としては……
■執筆時の状況
2周目の最後の城手前
ニテン堂ギャラリーコンプリート
1周目でハートの器コンプリート

文責:郁雄/吉武


 今回の主人公は、勇者の血筋ではない。
 誕生日に、たまたま「勇者っぽいカッコ」をしてたら、本当に勇者をやるハメになった、「なんちゃって勇者」であり、「コスプレ勇者」なのだ。
 巻き込まれ型の主人公だけど、お約束で「実は勇者の末裔だった」……という展開にしなかったのは好感度大。ついでに、冒頭の「ヤル気のない主人公っぷり」にも親近感無限大。

 ……という感じで掴みはオッケーでスタートした、ゼルダ最新作。
 今回は海洋冒険モノ。「未来少年コナン」や「太陽の王子ホルスの大冒険」を彷彿とさせます。
 実際、そこらへんを意識してか、ポリゴンをベタ塗りアニメっぽく処理(トゥーンシェイド)してる。
 キャラデザインは好みが分かれるだろうけど、等身を下げ顔を大きくしたコトで、キャラの表情や視線まで表現できてるのはヨイ感じです。注目して欲しい所に自動的に顔が向くのも便利。
 チョコマカ動く主人公は、かなりラブリーです。

 物語は、さらわれた妹を救い出すため、海賊一味と協力して敵の本拠地に乗り込むが……という所から二転三転して、「なんちゃって勇者」から「ホンモノの勇者」に成長して行きます。
 トボけた主人公、はつらつとした妹、やさしいおばあちゃん、しっかり者の女海賊など、人物設定は定石ながらキッチリできてる。ニテン堂で造ってくれるフィギュアで、詳細なプロフィールがわかるのもグッド。  ある程度の自由度を確保しながら、次に何をすればいいか明確に示すあたりは、さすが任天堂のゲームという感じ。
 しばらく迷ってると、赤獅子の王(主人公の船)がアドバイスしてくれるのも親切です。

 テーマ的なモノとしては、バブル経済崩壊後の混迷する時代に、それでも新たな可能性を求めて進んで行って欲しい……というような感じかな。
 今回も例の人が悪役なんだけど、随分とカッコイイ。ブタじゃないです。
 誇りある悪の風格が漂ってて、ラストバトル前のやり取りは、かなり燃える。
 映像表現としての迫力よりも、テーマを語る演出に力点を置いたのは正解でしょう。
 いい加減、びっくりCGショーみたいな映像は食傷気味ですから。
 全体的に、64版で確立したシステムをより洗練し、ちょっと肩の力を抜いて仕上げてみました、という印象です。楽しくプレイできましたが、不満点もけっこうあった。

 まず、マップ画面が使いにくい。
 色々な種類の地図をゲットして、それを見比べながら冒険を進めていくのだが、「ハートのかけらマップ」や「やぐらマップ」など専門的な地図を手に入れても、その情報をメインマップに反映してくれないので、どこに何があるのかを検索するのが大変です。
 わかり辛すぎるので、紙に地図を写して色々な情報を書き込んでましたよ。
 マッピングはゲーマーの基本だけど、もうすこし便利な地図を、システム的にサポートしてくれても良かったのではないかと思う。

 ほかに、細かい点を列挙しておく。

・アイテム画面からマップ画面、マップ画面からアイテム画面を呼び出せない。
・主人公視点モードだと、キャンセルしないとアイテムを使えない。
・防御してくる複数の敵に囲まれると、L注目してない敵に殴られやすい。
・追い風で船に帆を張ると全速移動してしまうので微調整がしづらい。また、R移動が遅すぎる。
・風向きが変わらず海流もないので、進路を決めると目的地につくまでヒマ。
・海なのに釣りができない。

 それと、終盤近くまで逐一何をすべきか教えてくれるのに、最後の最後で急に突き放されるのも困った。特に、L注目できない中ボスの弱点は、ゼルダ的にも反則だと思う。
 せめて、ダミーで関係ない場所にL注目するのだけは、やめてほしかった。
 プレイヤーを悩ませるのは構わないんだけど、正解がわかっても、スッキリするより理不尽さしか感じられなかったんだよな。特に、上記の中ボス以後ね。

 他にも気になる点はありますが、大きいのはこれぐらいかな。
 任天堂のゲームにしては、操作感に不満が多い気がします。
 謎解きに関しては、個人差があると思うけどね。

 そして一番の問題は、海を舞台にした冒険なのに、「海が魅力的に表現できてない」……これはかなりマズイと思う。
 最新マシンお得意の「ぬらぬら透明感のある水」が表現できるハズなのに、海までベタ塗りアニメ処理にしてしまっている。
 これでは「海を冒険してる」のか「水色の流動体の上を進んでる」のかわからない。
 おまけに、主人公の水泳能力が海洋民族らしからぬ貧弱さで、潜水能力もありません。
 海なら海底探検すべきだろう!

 陸戦ゲームだったゼルダで、あえて海を舞台にした割に、それを有効活用できてないと思う。
 前作は、馬で山あり谷ありを駆け抜けたのに比べ、今回は変化に乏しすぎる。
 イベントやダンジョン設計がゼルダらしくキッチリできてる分、海洋表現のイマイチ感が強い。
 ゲームの難易度は低目だけど、移動に手間がかかるので、かったるいと感じるコトが多かった。
 実は、手順を覚えて2周目をプレイするのが快適だったりするのもどうかと……攻略本を買えってコトか?正直いって、海の底の「あの世界」で、もっと冒険したかったです。

 そんな感じで結論としては、ゲームとしては十分遊べる水準だけど、「ゼルダの伝説」最新作としては、期待未満……という感じでしたな。
 あとは、「ゼルダの伝説 時のオカリナ」に対する「ムジュラの仮面」みたいな、「風のタクト」のアレンジバージョンが半年〜1年以内に出るのを期待してますよ。



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