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悲劇の名車か、失敗作か『誰が電気自動車を殺したか?』

革新的ではあっても、実用的……なのか?

1990年代の電気自動車、GMの『EV1』にまつわるドキュメンタリー、『誰が電気自動車を殺したか?』を観る。EV1は2人乗りの小型電気自動車。環境に優しい次世代の乗り物として一部で評価されるも、企業のエゴと環境政策の転換によって物理的にも社会的にも文字通り「潰された」悲劇のクルマ。というスタンスで描かれているんだけど、実際はどうなんだろう?

昨年、電気自動車の日産リーフに試乗したのですが、動力性能は普通の乗用車として何ら問題ないものの、航続距離が150キロ程度と短いのが気になった。本作に登場するEV1の航続距離は100キロちょっとだけど、実用的には問題ないという描かれ方でした。でも、同等のガソリン車なら300~500キロは行けるし、値段も安い。環境性能に優れるから我慢しろというのは厳しいでしょう。街乗り用のセカンドカーとしては使えても、1台目のクルマとして買えるモノとは思えない。

実際に電気自動車が受け入れられるためには、運動性能は同等以上で、航続距離は同等、値段は割高だけど10年乗るならガソリン車よりお得、ぐらいに性能アップとコストダウンが必要でしょう。本作で検証しているように、電気自動車の普及を望まない勢力がいるのは事実だと思う。けど、当時も今も電気自動車は進歩すべき余地が多いし、真に発展すれば守旧派を駆逐して、主流となりえるだろうとも思う。

現段階ではガソリン車が優れていると判断したので昨年、普通乗用車を買いました。最新のハイブリッド車ですら、価格差をペイできるほど安くなっていないし、電気自動車など論外。ガソリン車だって燃費も環境性能も高まってますし。でも、次に買い替える時は、電気自動車が選択肢に入るかもしれない。どうなるか、今から楽しみです。

夜の近距離ドライブと電気自動車

あの電気自動車で代替できるのか?

昨日、横浜で『EV FOR EVERYONE 横浜』の実証実験に参加し、電気自動車「NISSAN New Mobility Concept」に乗ってきました。周囲から注目されまくりで楽しい体験ではありましたが、日没とともに寒さが厳しくなり、貸出期限より1時間早く返却してしまった。

で、本日は仕事を終えて帰宅し、夕食後に自家用車で山ひとつ越えた先にある100円ショップへ出かけ、ボタン電池を買ってきた。愛車の日産ジュークは普通乗用車で、当然ながらひと山超えるぐらいのドライブは余裕。以前乗ってた軽自動車、ダイハツムーヴでも問題なかったでしょう。

では、もし電気自動車「NISSAN New Mobility Concept」で、この距離を走ったらどうか? 走行性能的には、山手の坂道をグイグイ登ってたので、山を越えて往復するぐらいは問題ないとは思う。けど、快適性の面で冬の夜にあのクルマで出かけたいとは思いません。車内の狭さと暖房なしという劣悪極寒な環境で行くのは、苦行以外のなにものでもない。自動車がバイクと違うのは、雨が降ろうが風が吹こうが冷暖房の効いた快適な小空間で移動できることのはず。深夜や風雨の移動こそ、クルマが便利だというのに、「NISSAN New Mobility Concept」は自動車としての快適性に乏しく、趣味のクルマたりえても、日常のクルマにはほど遠かった。

昨今、「超小型モビリティ」として新しい超小型車の規格が策定中だそうで、「NISSAN New Mobility Concept」もこの規格を見据えたものでしょう。けれど、高速道路、有料道路は走れない、近距離交通手段と割り切るとしても、現代のクルマとして最低限、大人ふたりが快適に乗れる室内空間を持つ規格にならないと、普及は難しいと思う。あきれた話ですが、超小型車を認めると同時に軽自動車を増税し、しかも超小型車を非実用的なしょんぼり規格にすることでユーザーの流出を防ぎ、軽自動車の税収アップを目論んでいる、などという話も聞く。新しい規格が、超小型車を普及させないためのものにならないことを切に願います。

極寒の電気自動車試乗『EV FOR EVERYONE 横浜』

なかなか実用には厳しいな。

日産の電気自動車実証実験『EV FOR EVERYONE 横浜』に申し込んでみた。横浜の関内周辺を、2人乗りの電気自動車『NISSAN New Mobility Concept』で3.5時間走れます。実験なので費用は無料。現在は受付終了してますが、将来的には有料でカーシェアリングサービスを開始したいのでしょう。

僕が予約したのは日曜日の15:30から、元町・中華街駅ステーションにて。山下町地下駐車場の地下3階だったのですが、Googleマップに登録された場所がちょっとズレてて悩む。正確な入口はココでしょう。


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予約した時間より30分ほど早く行ったのですが、すぐに受け付けてくれました。書類にサインして、簡単な操作説明を受ける。

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左側が今回借りた『NISSAN New Mobility Concept』。起動はキーレスエントリー式ではなく、カギを挿してしばらく廻したままにして、表示が「GO」になるまで待ちます。後部席はかなり狭く、ひとりでベルトを締めるのも難しい。小柄な人でないと厳しい。前席は左側から3点で締めるほか、右肩側からも掛けて固定する。後席ほどではないにしろ、前席もかなり狭いです。扉は跳ね上げ式。左右に窓はないので、風が吹き込みます。冬場は寒いので、防寒対策はしっかりしておきたい。厚着をしてると、狭い車内がますます狭くなります。

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操作系で一般的な自動車と違うのは、ウインカーのレバーが左側にあること。慣れれば操作は問題ないけど、左右どちら側が点いてるかが表示されないのがちょっと不安。電気自動車らしい装備としては、ウインカーのとなりにある、歩行者警告音を発するスイッチ。クラクションを鳴らすほどではないけど、歩行者に注意を喚起したい場合に操作します。ちなみに、クラクションは左レバーの先端にある丸ボタン。

左にあるDボタンを押して前進、Rボタンでバック、DとRボタン同時押しでニュートラル。クリープ現象はなく、坂道ではバックしてしまうのでブレーキからアクセルの踏み替えは迅速に。ハンドブレーキは左下にあるレバーを手前に引く。個体の問題かもしれませんが、ハンドブレーキの解除がしづらかった。坂道発進と、駐車場の周囲を1周して練習終了。走行可能エリアは京浜東北線より海側、桜木町駅から石川町駅あたりまでと決まっており、有料道路や高速道路に乗ってはダメ。もしエリア外で事故を起こすと保険の適用外になるそうです。とりあえず、以前行った「日産グローバル本社ギャラリー」に向かう。

走ってみれば小さなオートマ車という感じ。モーターのうなる音が耳につきますが、乗り心地はそれなり。加速はあまり良くないけど、アクセルベタ踏みすれば他車に遅れることはない。50キロぐらいは問題なく出せます。ちょっと走って感じるのは注目度の高さ。歩行者に注視されまくりで、落ち着かないレベル。カーナビとして、ダッシュボードへスマートフォンが据えつけてありますが、スタンドに固定してあるだけなので、駐車中にいたずらされそうで怖い。左右、ガラ空きですからね。駐車場は、指定の場所のほか、立体駐車場と路上パーキング以外の有料駐車場が利用可能とのこと。正直、こんなノーガードのレンタカーを放置するのは怖くてできませんでしたが。

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グローバル本社ギャラリーも電気自動車の貸出場所になっており、連絡すれば停めさせてもらえる。中ではラジコンの大会が開かれてたのと、先週『東京オートサロン2013』で見た「ジュークNISMO」が展示されてたのが印象的。北限まで走ってから、南限である港の見える丘公園まで走る。坂道も、特に問題なく走ることができました。

走行可能エリアをおおむね走ってみましたが、日が落ちると急激に寒くなる。防寒はバッチリしてきたけど、それでも手足が冷えて来ます。バイクに慣れた人なら大丈夫かもしれませんが、普段は乗用車に乗ってる人間には厳しい。同乗者から、もう耐えられないとギブを告げられたので、予定より1時間早く返却。

周囲から注目されまくりで面白い体験ではあったけど、コレを日常の足として使うのは厳しいと感じました。ハンドルが重く、加速もひと昔前の軽自動車なみ。冷暖房なしで、風が吹き込む。席が狭く、特に後席の乗り降りが大変なため、気軽にカップルで観光スポットを巡る、みたいな使い方は実用的ではないです。屋根付きバイクとしては鈍く、クルマとしては居住性が劣悪。近距離の移動手段と割り切っても、まだまだ改良が必要と感じました。

家に帰るために愛車のジュークに乗ったら、加速は良いし空調が効いて快適だしと、現代の乗用車がいかに優秀かをあらためて実感した次第。