『星の箱庭』Twitterで小説を:その141~150 #twnovel

試行錯誤中。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

141)●優越感:念願の車を手に入れた。費用はかかったが、注目度も高く良い気分だ。難点は、補給。ようやく見つけたスタンドで、燃料を注ぐ。電気なら瞬時にチャージされるが、この手間が良い。電気自動車全盛の時代に、あえてガソリン車を選択する。この趣味は、容易には理解されない。

142)●清掃志望:「清掃のバイトをしたいのですが」「トイレ清掃があるので、男性は不可なんです」「なら、女装します」「女装は不可です」「実は女なんです」「性別不詳も不可です」「本当は人間じゃないんです」「人間以外の方は……ひいっ!」「そうか、女に化けとけば良かったんだ」

143)●ナンバーツリー:街路樹の幹に填められた、プレートを確認する。「R43、R44、R45……おや?」R46の樹が行方不明だ。剥落したプレートを拾おうとかがむ私に、頭上から枝葉が襲いかかる。制御ユニットを失い、街路樹から害路樹と化した個体を処分するのも、私の役目だ。

144)●終末の日:世界が終わる。名残を惜しみ、閑散とした街を歩いていると、終末の鐘が響く。見知らぬ誰かの挨拶。「さようなら、またどこかで」「またお会いしま……」返事をし終える前に世界が暗転し、強制的にサービスが停止した。不人気のネットゲームなんて、するもんじゃないな。

145)●襲来:夜の東京湾を埋め尽くし、怪魚の群が背ビレを発光させている。誰もが、あの震災から連なる事象であると理解していた。だが、マスコミは知ってか知らずか、呑気な報道に終始するのみ。私は手にしたスポーツ紙を握りつぶす。見出しにはこう書かれていた。『ギョジラ襲来』と。

146)●船出:船内は、おごそかな沈黙に包まれている。僕は、彼女は見送るために乗船した。彼女の髪を撫で、唇を合わせ、別れを済ませる。口唇に冷気を残し、船は出航した。世界人口が減少を続ける時代だからこそ、許される贅沢。防腐処理された死者を乗せ、霊柩船は永遠の航海を続ける。

147)●星の箱庭:信州竜岡藩に、函館の五稜郭と同じ、星型稜堡が完成する。城郭といっても箱庭同然で、実用性は皆無。藩主松平乗謨(のりかた)自身、興味を失いつつあった。「地上に星を穿った次は、月を穿つ大砲を造ろう」仏語に長けた彼は今、ヴェルヌの『地球から月へ』にご執心だ。

148)○放尾:「もう一息なんだ!」「被害が増える。放尾しろ」「けど、あれにはアイツの魂が……クソッ」ビル群を縫うように高速移動する巨大な光球が、シェルターに避難した人々を魂消(たまげ)させ、地下へと没する。環境負荷に耐えかね、惑星に宿る魂すら離脱する時代となっていた。

149)○無魂:「あなたには、魂がない」「僕は無魂、なんですか?」「魂とは精神寄生体です。生来の無魂者であれば、問題ありません」「じゃあ、コイツは……」あれ以来、部屋の奥で眠り続けている彼女。「魂消(たまげ)た有魂者は駄目です。が、無魂者のあなたなら救えるかもしれない」

150)●優先権:会議室の扉を叩くと、資料を抱えた男が出てくる。空き部屋を勝手に使う輩だ。事前に予約した俺の方に優先権がある。その後も、不正に部屋を使おうとする連中を追っ払い、準備をすませた。そこへ、同僚が顔を出して告げる。「会議は隣の部屋だぞ。お前が予約したんだろ?」

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