『東京ゲートブリッジ』Twitterで小説を:その111~120 #twnovel

書いた後で、橋を見に行きました。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

111)●マイハンガー:毎朝、職場のクローゼットに上着を掛けようとすると、俺のネーム入りハンガーへ、女物のコートが掛かっている。誰だか知らないが、掛け直すのも面倒なので、新しいマイハンガーを用意した。これが彼女との馴れ初め。ふたつのマイハンガーは、いまも役に立っている。

112)●東京ゲートブリッジ:響は奈香にとって、このトラス橋みたいなもの。同期の俺と結婚して子供を作り、家庭を守る。そんなありふれた、どん詰まりの経路に拓けた、臨海道路。「でも、彼女は道に迷った。それを正して欲しいの、渡」大人びた奈香が、経路を変えに来たのと舌を絡める。

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113)○ドミノ:東海地方の大地震は、早朝に起きた。避難した近所の高台は霊園になっている。眼下の街へ、かつて映像で見たような大津波が遡上し、我が家を押し流した。腹に響く衝撃。彼方に見える富士山が黒煙を噴いていた。強い余震。地盤に亀裂が走り、墓石がドミノのように倒れ行く。

114)●駄作愛好:「すごく面白いのに売れない作品と、すごく売れるけどつまらない作品、どっちが良い?」「そうね、すごくつまらなくて、売れない作品が良いな」「すごく面白くて、売れる作品じゃなく?」「ええ、私だけがこの作品を愛でているって気がする」「好きです、僕を愛でて!」

115)○紹介報酬:指定の商品をブログでご紹介すれば、報酬がもらえる。記事は送られたものを貼りつけるだけ。アクセスが増えれば広告収入も入ってくる。そりゃ、言われるままに、記事をアップし続けたさ。それが革命政権樹立のための世論操作だと気づいて、収容所送りになったってワケ。

116)○ナスレディン・ギア:なぜ僕は、軍用の人形機(ククラマキネ)を繰っているのか。滅び行く経済圏連邦など知ったことではない。欠陥品の新鋭機を扱えるのが、僕だけだからか? 否、前席から見上げる彼女が、すべての元凶なのだ。続き→小説『ナスレディン・ギア(1/3)「灰色の人形機」』 | ★Astronaut Blog

117)●ネジ:「理性」のネジがふっとんだ。すべてがどうでも良くなる。「欲望」のネジがふっとんだ。やりたいことがなくなる。このままでは、「本能」のネジもふっとびそうだ。本能のおもむくまま、理性のネジと欲望のネジを両目に突き刺すと、激痛とともに「後悔」のネジがふっとんだ。

118)●居酒屋:料理は凡百の居酒屋メニュー。だが、運ぶのは水着美女。職場の飲み会でこれはNGだろう。特に、あの人が。「ほら、手が止まってる。じゃんじゃん飲め!」半裸の美女が肢体を密着させてきた……って、よく見たら、下着姿の女上司。「こ、この店はお触り禁止ですよ、課長」

119)○棄セノン:朽ちた都市の狭間で、輝きの粒が不確かな熱を帯びている。「これがセノン、だよ」少年の答えに、少女は「ふぅん」とつぶやき、指でつまむ。途端に光が弾け、数瞬だけ都市が灯火に照らされた。「この力があったせいで、彼らは都市を棄てて、天辺世界へ旅立つ決心をしたんだ」

120)○小さいおじさん:完徹三日目の視野に、身長二十センチの小紳士が出現した。「おじさん、あの時みたいに教えて。私、どうしたらいいの?」「諦めなさい、と言ったは……」女優は反射的に、小紳士を握りつぶす。そうだ、あの時もこう言われてから、オーディションに勝ち残ったのだ。

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