Twitterで小説を:その41~50 #twnovel

創作メモ兼用なので、これらをフルサイズの小説に起こす場合もあります。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

41)■混濁:仕事を終えて帰宅する頃、体調は最悪になっていた。どうにかグリーン車までたどりつき、貧血寸前でシートに身を沈める。決済のため、天井のポートに電子マネーをかざす、赤ランプ。かざす、黄ランプ。かざす、白ランプ。かざす、茶ランプ。なんだ、緑ランプは売り切れか。

42)■宇宙遺産:「この先は人類初、アポロ11号の月着陸地点。宇宙遺産に認定されているんだ」「本当は、宇宙軍の軍事基地があるんだろ?」「いいえ、エイリアンの秘密基地よ」「違う、月着陸のヤラセを隠してるんだ」「みんな正解。人類の夢と希望がめいっぱい、詰まっているのです」

43)■婆ガイガー:うちの婆さんは、放射能が見えるそうだ。紫がかった灰色で、舐めると薄甘いとか。冗談だと思ってたけど、昨今の風潮じゃ馬鹿にもできない。思い切って、弟子入りを頼んでみた。そしたら婆さん、言いやがった。「オレの専門はラジウムだぁ、セシウムは他をあたりぃな」

44)■浮岳:スカイツリーに係留された、全長三百メートルを超える飛行船。巨体を貫くキャットウォークを歩み、船の中央部を目指す。通された執務室は簡素で、出迎えた彼女は、僕の良く知る幼なじみのままだ。日本語を公用語とする浮遊国家『浮岳』、その初代大統領との会見が始まった。

45)■さらばWコム:ダウス携帯から送信。『データ通信では携帯に負ける、早急に通話定額を実現せよ』宛先は、過去の自分。この機能が欲しくて、大嫌いな携帯電話に機種変更したのだ。Wコム終了が現実なら、終わらない現実を創るまで。Wコム信者は常に、PHSの勝利を確信している。

46)■鎌倉俥夫は眠れない:深夜の鎌倉を、人力車がゆく。俥夫は無愛想に、不気味な古跡を巡った。洋館の門前で客が尋ねる。「いつ、私を殺してくれるの?」俥夫は首を横に振り、駅前で降ろす。妙な噂のせいで、夜に客がつくのは助かるが、死神の真似をさせられるのは、勘弁してほしい。

47)■俯瞰:未来の学生は語る。「この時代の日本は、何を考えていたんだ? 敗戦を終戦、軍隊を自衛隊と称し、非核を唱えながら核の傘に守られている。実質、アメリカの属国じゃないか」「同感だけど、我々も独立惑星と称して、異星人に飼育されているのだから、似たようなものだよ」

48)■宿狩:這い出した岩塊が、粉塵をまとって砕け散る。そいつは、外殻を持たぬ尾部を、ヘルミット城塞の基底にねじ込んだ。荷が勝ちすぎたか? 些細な危惧は、齢百年の古城が鳴動することで払拭される。辺境甲殻獣「宿狩」に背負われた城塞が、敵陣に向けてずしりと移動を開始した。

49)■落下物:手にした携帯が弾き飛ばされ、ホームと電車の隙間に吸い込まれる。男は呆然と立ちつくし、終電を見送った。携帯は、駅員に拾ってもらったが、乗るべき電車は絶えた。通過する急行を見送りながら、男は思う。携帯を落とさなければ、俺はこの電車に飛び込んでいただろうな。

50)■幸福な虜囚:科学は、人々が考えているよりも進歩していた。情報はゆっくりと開示され、偽りの最新技術が時代を動かす。おかげで人々は、神も悪魔も超能力も、異星人も未来人も超古代人も、前世も来世も幽霊も信じられた。「幸福な虜囚」と呼ばれる時代は、まもなく終焉を迎える。

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