一定以上の品質は保ちたいもの。
Twitterで書いている、140文字小説のログです。
11)■UFOが消えた日:突如出現した円盤状の飛翔体が、蒼空に軌跡を描く。やがて、飛翔体は自身が外宇宙から飛来した親善使節であると告げる。世界が熱狂する中、とあるUFO(未確認飛行物体)マニアは落胆していた。「存在が確認されたら、それはもはやUFOじゃなかろう」と。
12)■そは実りある塔:世界樹の塔は、天空まで連なるという。蒼き空の領域から、昏き星の領域へ。その伝説を信じた私は、幾多の困難を経て頂上へと赴いた。空の果ては一面が、星明かりの灯る人工物の殻に覆われている。塔は天空の殻より生じ、世界という果実を実らせていたのだ。
13)■忙し待ち:顧客からの催促はひっきりなしだというのに、仕事が始められない。アレさえ届けば、すぐにでも納品できるのだが。ボヤきにボヤき続けた彼は、職を失ってもなお、届くはずのないアレを待ち続けている。別な誰かが与えてくれるはずもない、「やる気」という意志を。
14)■ドアミラー様:衝撃が互いのドアミラーをもぎ取った。車幅は狭く、すれ違えるぎりぎりの距離。突っ込んだのは、僕のミスだ。対向車から降りてきた青年と殴り合ったことも予想外だが、その助手席にいた気弱そうな女性を妻とすることになるとは。まったく、ドアミラー様々だ。
15)■ぎらつく瞳:両親とはぐれた私は、戦闘直後の草原に迷い込んでいた。死と破壊が充満する中、衝突した二両の戦車の間に潜り込んだ。ふと気づくと、裂けた装甲板の隙間から、ぎらつく瞳が覗いている。瞳は微動だにせず、鈍く乾燥を続けながら、無言で死を告げているのだった。
16)■のたうつ猫:視界の遙か先で、猫が道路を横断する。迫る車に吸い寄せられるように、タイヤが頭蓋を踏む。転がる猫は、血を蒔いてのたうち、割れた頭部から小さな人型の群れが這い出るのが見えた。それは幻覚だとわかっているが、どこまでが幻覚だったかは今も判然としない。
17)■コピー地獄:あの国の尽力で、市場からコピー商品が消滅した。金まかせにブランドを買い占め、違法を合法化するやりかたはどうかと思ったが、ブランドに左右されず商品を見極める力がついたのだから、結果オーライだろう。粗悪な本物になど、もはや誰も見向きもしない。
18)■超エンジニア:彼は問題を切り分け、修正した。エラーの嵐がぴたりと止まり、システムが正常稼働を始める。客は賞賛を惜しまなかったが、作業ログをチェックすると、今回とは無関係な修正が数カ所あった。噂は本当のようだ。トラブルを仕込めるほど優秀なのも、考え物だな。
19)■超文明:世界各地で、先史文明の遺跡が発掘され、失われた技術が復活しつつある。興味深いのは、彼らもまた、かつて超文明が存在していたと信じていたことだ。過去に倣わざるを得ない我々からすると、超文明が夢想の産物にすぎなかった彼らが、羨ましくて仕方がない。
20)■死信:この手紙が届くころ、君はこの世にいないだろう。あの世に手紙を届けるすべを、私は開発したのだ。君にひとつ、頼みがある。あの世の人々に、この世のことを伝えてほしいのだ。あの世で成長した君が、君の世界で言う「死後の世界」の記憶を取り戻せると信じているよ。