ジャンボジェット─いびつな傑作機

将来の夢は、ジャンボジェットのパイロットだった。そんな人もいるだろう。

41年前のきょう、米国ボーイング社の大型旅客機、ボーイング747が初飛行に成功した。ジャンボジェットの愛称で知られるこの機体は、改良を加えながら、現在も世界の空で重要な役割を担っている。四機のジェットエンジンを主翼に吊り下げた傑作巨人機は、大量輸送時代を象徴する存在だ。

大型旅客機の代名詞とまでなったジャンボだが、この成功は意図されていたものではなかった。ジャンボが開発された当時、航空機の主流は遠からず超音速旅客機(SST)になるものと思われていた。ジャンボは、SSTが実用化されるまでのつなぎとして、いずれは貨物専用機となるべく設計された。操縦席が2階に設置され、胴体の前方上部が盛り上がっているのは、機首から荷積みをしやすくするためだ。たしかに貨物機としての利便性は高まるが、航空力学的には「いびつ」な形状だ。ジャンボが旅客専用に設計されていれば、機体形状は他の旅客機と同様、より円筒形に近づいただろう。

ジャンボの運命が変わったのは、SSTの開発が遅れたことにある。実験機としてコンコルドが開発されて以降、技術的な問題や経済効率、環境問題からSSTの開発は遅々として進まなかった。かわりに航空運送の主役を担ったのは、皮肉にもつなぎとして開発されたはずのジャンボだった。

日本航空は保有する37機の旅客用ジャンボのすべてを退役させる予定だ。経営再建を目指す日航にとって、ジャンボはすでに重荷となっている。全日空でも、ジャンボを全廃する方針だ。最新型のジャンボ、747-8型は、旅客型のインターコンチネンタルよりも、貨物型であるフレイターの受注が先行している。

旅客輸送は、大型機から、中・小型機へのダウンサイジングが進んでいる。日航もブラジル、エンブラエル社の小型旅客機ERJ170を、国内線に順次投入している。40年以上現役を続けているジャンボは、当初想定された用途である貨物輸送に主軸が移りつつある。ジャンボを超える大型旅客機である、エアバスA380という選択肢も存在するが、ダウンサイジングの流れに反する。

はからずも二十世紀の大型旅客機の顔となった、「いびつ」な傑作機であるジャンボの活躍に敬意すべきだ。しかし、大型旅客機による大量輸送は時代遅れだ。二十一世紀の旅客需要へ柔軟に対応できる、中・小型機への移行を加速すべきだ。

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