小説『駿河城御前試合』気楽に読める地獄めぐり

漫画『シグルイ』の原作小説『駿河城御前試合』を読了。

寛永6年9月24日、駿河大納言徳川忠長公の面前にておこなわれた駿河城御前試合。11組、22人の剣客たちが、それぞれのドラマを背負って死闘をくりひろげる。『シグルイ』の原作となった第1試合、「無明逆流れ」のほかにも、さまざまな経緯でバトルが発生。おなじ決闘というシチュエーションながら、流麗な筆致でさまざまなバリエーションを楽しませてくれます。言葉づかいはけっこう難しいけど、意外にサラサラ読めますね。物語の基本パターンは、美剣士かブサイク剣士が、絶世の美女をめぐって争う感じ。各エピソードは完全に独立しており、最終エピソードまで交わらないため、さながら平行世界のごとし。剣豪は横のつながりが希薄なのでしょうか? 見せ場となるはずの決闘シーンは、かなり淡泊。決闘そのものよりも、決闘にいたるまでの過程をみせるのがメインのようです。最終エピソード「剣士凡て斃る」で、「無明逆流れ」の登場人物のその後も描かれますが、おそらく『シグルイ』はちがう展開になるのでしょう。だって、ねぇ……。

残酷無残、死屍累々、愛別離苦の大安売りなわりに、描写があっさりしているので、読んでてイヤな気分になることはない。各篇は短く、区切りがつけやすいのも良い。『シグルイ』の続きを読むというよりは、気楽に読める地獄めぐりといったおもむきです。無残、無残。

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