【スプートニク・ショック】昭和32年『週刊朝日 緊急増刊 人工衛星』を読む

宇宙には死体が漂っている!

昭和32年(1957年)10月刊行の、『週刊朝日 緊急増刊 人工衛星』を入手したので読んでみた。定価30円。1957年10月4日にソ連が打ち上げた人工衛星、スプートニク1号の特集号。いわゆるスプートニク・ショックというヤツですが、本号には『スプートニク・ショック』という表現はでてきません。冷戦まっただ中、アメリカが人工衛星を打ち上げるまえの特集なので情報は西側寄りで限定的。

DSC_0726

当時開発中だったICBM、大陸間弾道弾にからめて、ロケット技術についてソ連に先んじられたことが論じられている。ICBMという究極兵器があるのだから、通常兵器は無用の長物になる──つまり、日本の再軍備化は不要と結論してますが、実際は核抑止力で全面戦争が避けられる反面、局地戦が増えたので通常兵器が不要ということにはならなかったワケですが。面白かったのは巻末に載っていた『空想ルポ 1967年11月7日月世界探検』という記事仕立ての空想小説。ベータ衛星なる宇宙ステーションを足がかりに造ったロケットで月を目指すという、現実とは異なるけど、まったく荒唐無稽というわけでもない展開。ただ、宇宙に出たら真っ先に注目するであろう青い地球の美しさについては、作業がいそがしくて「のんびりと地球見物なんてことは、とうてい許されない」ので、詳細は描写されておりません。いっぽうで驚いたのは、月へむかう途中で宇宙ステーション建造時に行方不明になった作業員の死体に遭遇するというくだり。最近のSFでも、宇宙開発黎明期に行方不明になった宇宙飛行士の死体を発見する、というのはお約束の展開なのですが、アポロ以前からあったのか。宇宙には死体が漂っている!