リアル黄門様『光圀伝』を読む

里見黄門は正しかったのだ。

冲方丁著の歴史小説『光圀伝』をAmazon Kindleで読む。ご存知、水戸の黄門様を、史実に基づいて描く。リアルな黄門様は、印籠をふりかざして世直し旅はせず、大日本史という歴史書を編纂した人という認識でした。歴史小説というのは、記録に残っている部分は史実通りに、記録がない部分は作者の想像でふくらますというのがセオリーなのですが、オリジナルの部分が上手い。光圀が得た「義」の考えが、ラストへとつながる流れは、リアルに考えれば嘘だと思うけど、美しい破滅への流れだと思いました。世が世なら、戦国武将として大暴れしたであろう剛の者が、平和な江戸時代初期に、そのエネルギーを文化事業にそそぐという、インテリマッチョな光圀像は新鮮。『天地明察』で、やたらとキャラが立っていた剛の者である黄門様が大活躍して、満足です。

以前、ドラマで里見浩太朗さんが演じた黄門様が、助さん、格さんより強そうなのはどうかと思ったけど、光圀伝の黄門様がアリなら、里見黄門は正しかったのかもしれません。

本書は、Kindleの電子書籍で読みましたが、選択した語句を辞書時で調べたり、ウィキペディアで検索もできるので、登場人物の史実としての部分と、フィクションとしての部分を随時調べられるのが便利。最後に読んだ場所を異なる端末間で共有してくれるので、タブレットで読んだ続きをスマホで読めるというのが実に良い。分厚い本は、電子書籍で読むのもアリですな。