映画『ドラゴンボールZ 神と神』を観る

勝たなくて良い、でも強くなって良い。

映画『ドラゴンボールZ 神と神』を劇場で観る。ドラゴンボールの映画というと、本編の幕間にムリヤリなオリジナルをねじ込む関係上、制約が大きい。ゲストキャラ以外の人間関係を大きく変えるわけにもいかず、時間内で強大な敵を出現させて打倒させなければならない。結果、主要キャラの動きが伝統芸能のように確定してしまい、僕はあまり好んで観ようとは思っていなかった。

しかし今作は、原作者みずから監修とのことなので、ちょっと変わった展開が観られるかもしれない。その期待は裏切られませんでした。今作の的は破壊の神。気まぐれに大量破壊はするけど、邪神というほど悪意もない。ポスト東日本大震災的な、悪意のない天才的かつ天災的な強者と設定されている。序盤、主人公の悟空はこの破壊の神にまったく歯が立たない。最後にどうなるかは、実際にご覧いただきたい。

一方、ライバルのベジータは、いつもの劇場版だと、ドヤ顔で出てきて敵にボコられ、悟空の引き立て役になるのがお決まりなんですが、今作では早々に武力制圧は断念。力では勝てない相手に、異なる方法で家族や地球を守ろうとする美味しい役どころ。ほかにも、ドラゴンボール歴代のキャラが、それぞれ出番は少ないながらも活躍しているのも良い。子供向けながら、お父さん、お母さんもニヤリとするネタが散りばめられている。

もちろん、今様にド迫力のバトルを堪能はできますが、作者の意図はむしろ、名を捨ててでも実を取り、絶望的な敵に立ちむかう。これからの日本に必要な何かを示したいのかなと思いました。