『 #2秒でバレる嘘をつけ 』Twitterで小説を:その121~130 #twnovel

連作に挑戦中。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

121)●サードホイール:「僕はお邪魔虫だ」と、修平は思う。「俺は余計な存在だ」と、保は信じる。二人は彼女への想いと、友情と嫉妬に揺れ動いていた。そして成実乃もまた、疎外感に苦しむ。「二人の友情には割り込めない。私は女の真似をして、愛情で二人を繋ぎ留めているというのに」

122)○ナンバレス:『あなたのマイナンバーは登録されておりません』何度、カードを通してみても、結果は同じ。番号登録も、遺伝情報も存在しないという。担当者が、警備員をともなって告げる。「最近、多いんですよね。死んだ所有者の記憶を移植しても、模造人間に人権はないんですよ」

123)○損失補填:「私が決めた契約ですから、結構です」「いえ、自分があなたの立場だったら、納得できませんので」「それで気が済むなら……」かくて私は、五年の寿命を補填された。付与される見込みと言われた、献魂補助余命十年がふいになり、担当悪魔氏は平身低頭することしきりだ。

124)●ホワイト対策:「これは難問だ」「どうしたの?」「こないだお前からもらったチョコのお返しを、どうしようかと思って」「まだ半月もあるじゃない?」「そうだけど、当日は万全の体制で臨みたい」「じゃあ、攻略対象から確認」「どうぞ」「攻略より占領政策を知りたいんだけど?」

125)#2秒でバレる嘘をつけ:「俺、この戦いが終わったらワイフと離婚するんだ」「お前、結婚してないだろ。んで、戦争中じゃねぇだろ」「いや、これは死亡フラグを回避するための高度な……」「意味わかんねぇよ。だいたいそれ、彼女と結婚するだろうが!」「意味、わかってんじゃん」

126)○判定:「一年後の今だから聞くけど、安全だと言ってた奴と、危険だと言ってた奴、どちらが正しかったと思う?」「好きな方を信じなよ。安全と言う奴は、安全であって欲しい側の人間で、危険と言う奴は危険であって欲しい側の人間だから。どちらも、君を守ることに興味はないのさ」

127)○ベッドライナー:捕縛され、秩序に塗り固められてもなお、彼女は我欲に忠実だった。それは、情報欲。「その趣味は共感しかねるよ」監視者の嘆息を無視し、彼女は画面にあふれる情報の濁流をうっとりと見つめる。懲役千年の極悪クラッカーは、食用クラッカーの顧客情報に欲情中だ。

128)○ベッドライナー2:稲城響美(イナシロ・キョウミ)はクラッカー、サウザンドの表の顔だ。改竄を重ねた彼女の経歴は、あらゆる誤情報が績層している。学生であること、良家の子女であること、さらに裏の顔すら虚偽。「否白・興味」潔白を否定し、興味に忠実。それが彼女の本質だ。

129)●忘れてました:デートの日を忘れていた。予定を告げるスマートフォンをひっつかみ、家を飛び出す。これさえ忘れなければ、大丈夫。もう、忘れん坊とは言わせないぞ。アパートに駆けつけ呼び鈴を押すと、出てきたのは怪訝な表情の彼女。「あんた、私と別れたの、忘れてるでしょ?」

130)○ベッドライナー3:和泉船真(イズミ・センマ)にとって、響美は興味深い異分子だった。枠にはめられた秩序ではなく、筋金の通った混沌。それを秩序へ導くことが、自身の責務。彼女が犯罪者を狩るための疑似犯罪者と化したことへ、本人以上に責任を持つべきだと彼は確信している。