Twitterで小説を:その21~30 #twnovel

不老不死ネタは、しばらく自粛かな。

Twitterで書いている、140文字小説のログです。

21)■不沈艦:その巨大戦艦は、大口径の主砲を備え、革新的な復元装甲に鎧われている。だが、鈍重で扱いにくく、さしたる活躍もないまま終戦を迎えた。戦後も軍港の片隅に浮かぶその艦は、頑丈すぎて解体できず、機密の塊で売却もできず、今も不沈艦の名をほしいままにしている。

22)■革命の理由:精悍な男性が、天空を指し示す。その指先に、偉大な国家の未来があるのだ。連日メディアから流される、独裁者を称える映像は、熱烈な支持者すら苛つかせていた。同じ映像の反復で生じる敵意が、民主化革命の遠因となることを、独裁者は終生、理解できなかった。

23)■即物人間:ロボットの指先に、赤熱した針金を当てると、瞬時に腕を跳ね上げる。思考力をもたず、反射のみを再現した即物人間だ。多様な反射を学習させた結果、今ではもっとも人間に近しい存在とされている。即物人間が人間の即物性を証明するとは、実に皮肉が効いている。

24)■地球の管理:技術の進歩により、地球環境をリアルタイムで把握できるようになった。過去に悪玉とされた要因が冤罪であったり、その逆もしかりで、環境保護の暗部が明らかになる。我々は先人の愚行から学び、太陽系開発を推進することで、地球環境の回復を優先しなければならない。

25)■電子決済:端末にカードをかざすと、涼やかな電子音が響く。それで決済は完了した。私は安楽椅子に腰を落とし、処置を待つ。便利だが、味気ない世の中になったものだ。医学の進歩により、不老不死を達成した時代。苦痛も恐怖もなく、わずかな好奇心とともに、私は死を待っている。

26)■有能者(うのうしゃ): 彼は自他ともに認める、有能な人。任務の遂行は完璧、トラブル対応は迅速で正確。その盛名を維持するために、他人の非を声高に糾弾し、自身の非は他へ転嫁し、黙殺する。無能と蔑む者は丹念に排除した。ゆえに彼は、自他ともに認める、有能者に相違ない。

27)■ナビ子さん: ナビは告げる。「まもなく、目的地周辺です」――だが、肝心の場所は工事中。「本当に、ここで合ってるのかよ?」俺がぼやくと、ナビは告げる。「まもなく、ふたりの家が完成します」助手席に座る俺の彼女は、カーナビの声を担当したのが、ちょっとした自慢だった。

28)■超光速:西暦2011年、ニュートリノが光速を越える事象が観測された。相対性理論を覆す発見は、未知の要因による誤認だった。超光速航法など、夢物語にすぎないのだ。そんなSF小説を書いて、編集者に呆れられたことがある。思えば20世紀は、科学の未来に優しい時代だった。

29)■ホールインワン: その一打はグリーンで弾ぜ、カップへと吸い込まれた。見たか、凄いだろう? お前たちには一生、縁のないものを見せてやったぜ。そう勝ち誇る彼を、人々は温かく賞賛した。そのゴルフ場では、ホールインワン直後に急死したゴルファーの幽霊が名物となっている。

30)■パンデミック: 世界を満たした病が収束したころ、瓦礫の海で妻と出会った。罹患者の群は朽ち果て、生存者たちが再建を模索する時代。妻が罹患者と知ったのは、つい最近のことだ。寿命で死ぬ前に、彼女が老いを克服した新人類だと認められて、良かったと思う。未来をよろしく。