『駱駝祥子』車夫すら続けられない車夫

よくてもだめ、わるくてもだめ、この家業の行きつく先は死あるのみ。

老舎著『駱駝祥子(らくだのシアンツ)』を読んだ。ネタバレ注意。中国、北平(北京)を舞台に、無学だが頑強で実直な青年、祥子(シアンツ)が、人力車の車夫として苦闘する物語。祥子は賃貸しの人力車を引きながら金をため、自分の俥を買う。だが、軍隊に強制連行され、俥を失う。駱駝3頭を奪って軍を脱走し、売った駱駝を元手にふたたび俥を買おうと働きはじめるが、そこから彼の転落人生がはじまる。

車夫が主人公の作品としては、『無法松の一生』が有名ですが、車夫の生活については『駱駝祥子』のほうが詳しい。無法松の松五郎が、高潔なまま車夫として散るのに対し、駱駝の祥子は、現実に打ちのめされ、おめおめと生きつづけていく。祥子の末路を見るにつけ、不運だったとも思えるし、もうちょっと上手く立ちまわればよかったのではとも思える。ここらへんのバランスが絶妙で、最低ランクの車夫すら続けられなくなる祥子の姿には説得力があります。

志を砕かれ、堕落する主人公。身につまされる物語だなあ。