高速道路無料化─実験は交通量の多い路線で

2日、国土交通省は6月をめどに、高速道路37路線50区間の無料化を発表した。無料化対象からは東名・名神高速などの主要路線、首都高速や阪神高速など、大都市圏内の路線、県庁所在地間をむすぶ路線が外された。ささやかすぎる無料化に失望した。

高速道路無料化は、民主党のマニフェストに掲げられたものだ。しかし、財務省や世論の反発もあり、当初予定された予算の6分の1に削られ、中途半端な内容になってしまった。

無料化プランを策定した馬淵澄夫国土交通副大臣は、「国民に広く無料化を実感してほしかったが、財政制約上、限定された状況で路線を選定した」と述べ、苦渋の選択であることをうかがわせた。無料化による渋滞の増加や、公共交通機関との兼ね合いなど、さまざまなトラブルの発生が予想される。だが、まずは大規模な無料化を実施し、諸問題をあぶりだすべきだった。

無料化による交通量の増加は、排出される二酸化炭素の増加を招くとの意見もある。だが、自動車業界はハイブリッドカーや電気自動車、燃料電池車、水素自動車など、エコカーへの転換を進めている。

無料化と同時に、主要幹線道路に専用スタンドを設置するなど、エコカーを走らせるためのインフラ整備を拡充すれば、一気に普及が促進されるだろう。すべての自動車が、二酸化炭素を撒き散らすわけではない。二十一世紀のモータリゼーションを推進する意味でも、価値のある試みのはずだった。

国交省は、今回の無料化を「社会実験」と定義している。限られた予算の中で、無料化しても渋滞のおきにくい場所を選んだという。だが、これを実験と称するなら、むしろ影響の大きい路線で実施すべきではなかったか。

限られた予算で、地方路線をまんべんなく無料化することは難しい。だからこそ、交通量の多い路線を、一部区間だけでも無料化してみるべきだ。今回の無料化路線を見て、どれだけのドライバーがよろこぶというのか。たとえ小規模でも、頻繁に使う路線が無料化されてこそ、インパクトが生じるはずだ。

道路を維持するにはコストがかかる。だが、速くても通行料がかかる区間は、可能なら避けたいのが人の心理だ。事実として、限定つきながら高速道路を千円にすることで、利用は促進されたが、未曾有の大渋滞は発生しなかった。これを一歩進めた無料化実験をしてみる価値はある。

高速道路無料化により、地方への物流が促進され、一極集中の解消が期待される。だが、今回の無料化では、その効果は限定的なものとなるだろう。ない袖はふれないと言うが、6分の1の丈でも、ふり様はあるはずだ。限られた予算の中でも、より有益な「社会実験」の手段を模索すべきだ。