流れ打て!『無法松の一生』を読んだ

必殺、流れ勇み駒暴れ打ち!

人力車がマイブーム。マンパワーに依存したローテク輸送機関ですが、そこがいい。そして日本で一番有名な車夫といえば、岩下俊作著『無法松の一生』に登場する、無法松こと富島松五郎。人力車にこだわるなら、この作品は外せないので、小説を読んでみた。ネタバレ注意。

福島県小倉で、「無法の松」として知られる車夫、松五郎と、未亡人となった軍人の妻と、その息子との交流を描く。モノクロ映画を観たことがあるので、大筋は知ってましたが、原作小説は流麗な筆致で松五郎の生涯を描く、荒々しくも純朴な作品でした。

物語は大変よろしいのですが、肝心の人力車はあまり活躍しない。車夫という下層階級の主人公が、軍人の妻子という上流階級の人々に、ほのかな想いを寄せるというテーマが主眼。むしろ人力車より、祭りで太鼓を叩くシーンのほうが印象的。やっぱり車夫というだけでは、インパクトに欠けるのかな。