「感想」カテゴリーアーカイブ

日本とトルコの交流物語『海の翼』

エルトゥールル号って正確に言えるようになったのは、つい最近のことです。

秋月達郎著『海の翼』を読む。イラン・イラク戦争時に日本人を救援してくれた、トルコ航空機の活躍と、その「恩返し」の元となった、明治時代に和歌山県沖で遭難したトルコの軍艦、エルトゥールル号の救出活動を軸に、日本とトルコの交流を描く。トルコは親日国として有名ですが、日本は親トルコというほどではない。多くの日本人にとって、トルコは興味のない国か、せいぜい観光地のひとつ、ぐらいでしょう。そんな日本人むけに、史実を踏まえて物語り仕立てで読みやすく描かれています。

トルコ革命前のオスマントルコ時代が舞台なのに、のちの初代大統領ムスタファ・ケマルをアタチュルク(父なるトルコ人の意、革命後に贈られた姓名)と呼んだり、日本人には言いづらいであろう「エルトゥールル号」という原音にちかい呼び名を当時の漁民が即座に理解したりと、トルコの歴史をかじっていると違和感を感じるシーンもありますが、わかりやすさを優先するなら、これぐらい大胆にデフォルメする必要があるのかも。

和歌山県の串本町に行ったばかりなので、イメージをつかみやすい歴史小説でした。

『週刊東洋経済』を年間購読してみた

日曜日に読めるのはありがたい。

最近、『週刊東洋経済』という経済誌を読んでいます。値段はちょいと高いですが、質の高い情報を得ることができる。なんだかんだで、昨年から欠かさず購入しているので、思い切って定期購読を申し込んでみた。定期購読のメリットは、1冊あたりの単価が安いことと、電子版を自由に閲覧できること。それと、月曜発売のところを日曜日に読める。興味のあることも、ないことも、社会のことを色々学ぼうと思います。

映画『ヒューゴの不思議な発明』駅の妖精少年大活躍?

ヒューゴはGK!

映画『ヒューゴの不思議な発明』を劇場で鑑賞。20世紀初頭のフランス、パリを舞台に、駅で時計のメンテナンスをしながら、父親の残した自動人形を修理している少年、ヒューゴの不思議な体験を描く。CGを多用した映像美がすばらしい。リアリティを追求するより、CGならではのディテールで魅せるのは、『ALWAYS 三丁目の夕日』に通じるものがある。苦難の末に、自動人形を修理するとあらビックリ……というのを期待したのですが、さほど驚きの展開にはならず。もっとファンタジーな展開になるかと思っていたら、映画創成期の苦労話みたいな展開に。邦題の問題ではありますが、主人公、発明してないじゃん。

水準以上の感動話にはなっていますが、同監督の作品としては『ニューシネマパラダイス』の方が完成度は高いと思います。

映画『ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵』を観た

続きは、まだ?

映画、『ベルセルク 黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵』を劇場で鑑賞。一匹狼の傭兵、ガッツがグリフィス率いる鷹の団に加わることで、大いなる運命が動きだす。いちど、テレビアニメ化した作品を再度映画化。今様にCGを多用していますが、以前のCGアニメほど違和感がなく、大迫力のアクションを堪能。原作をコンパクトにまとめつつも、ダイジェスト的な駆け足感はあまりない。ただ、三部作のためか最後が唐突に終わる感じ。作品に不満はないけど、早く続きが観たいと思わせられるのが難点か。

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もらった絵柄は、ガッツとグリフィスの剣戟。けっこう良いシーンかな?

左足ブレーキのススメ『はしるまがるとまる―もっと楽しいクルマの運転』

こんど試してみよう。

ポール・フレール著『はしるまがるとまる―もっと楽しいクルマの運転』を読む。プロドライバーが初心者向けに書いた、ドライビングの入門書。日本の交通事情に合わせて改訂されているので、現代のドライバーにマッチした内容になっている。ポジションの決め方から、コーナーリングの仕方、エンジンの仕組みまで、要点がコンパクトにまとまっているので、大変読みやすい。

本書で勧めているのが、オートマチック車のブレーキを左足で踏むこと。教習所では、右足オンリーでアクセル、ブレーキを踏むように習うけど、左足も使ったほうが素早く反応できるというのが本書の主張。確かに、アクセルとブレーキを同時に踏まないようにすれば、両足を使うほうが合理的な気はする。

知っているとちょっとドライビングが楽しくなる情報が散りばめられた良書です。


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ファミ通の付録が絶妙すぎだ

電子版では味わえない!

今週の週間『ファミ通』の付録は、オリジナル手袋。スマートフォンの操作もできる、付録としてはなかなかの逸品。

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雑誌の付録って、クリアファイルだのポストカードだの、いまいち何に使うか困るアイテムが多いのだけど、この手袋はクリティカルに役立った。夕方から強烈な冷え込みで、たまらず付録を開封。手袋のままでiPod touchも使えて、実に快適。今冬は愛用させてもらいます。

反米が観ていて辛い『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』

無限と言うには、けっこう手狭な大宇宙。

アニメ映画『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』を観る。一度は完結したヤマトの復活篇ということで、新クルーとともに艦長古代進がヤマトに乗り、地球の危機に立ちむかう。新作だけに、作画は美麗だし音楽も壮大なのだが、そこで展開される物語が観ていて辛い。新たな敵、SUSがどっからどう見ても某超大国。言いがかりに等しい理由で地球の宇宙船を攻撃してくるほうも酷いが、何の情報もなく交渉もなく防戦一方の地球も危機管理がおろそかすぎる。軍人が、勝手に政治的判断をして戦うのも、当然というスタンス。

初代のヤマトについては1974年からの作品なので、展開が強引だったり、ご都合主義すぎる点は仕方ないと思う。ただ、2009年の新作アニメで旧態依然の展開を見せつけられるのは辛かったです。そりゃ、宇宙戦争そのものが嘘っぱっちではありますが、そこに現代を投影した、嘘なりのリアリティを感じさせる努力が必要なのではないでしょうか。

2010年公開の実写版ヤマトの方が、旧作の要素を用いつつも現代に通用するエンターテイメントを狙っていたと思います。

滑稽なまでに真摯な人々『自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝』

よい子もわるい子も、真似すんな。

『自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝』を読む。みずからを被験者として実験を行う、モルモット科学者による10のエピソードを紹介。消化の仕組みを調べるために、木や骨を飲み込んでみる、あたりは序の口。あえて病原菌に感染してみたり、放射性物質を素手で扱ってみたり、時速1000キロへ急加速、急停止してみたり。19世紀末から20世紀にかけて、時代順に事例を扱ってますが、古いものほどシンプルかつ危険度が高い。逆に言えば、この時代に科学者たちが危険をおかしたからこそ、現代では何が危険かがわかるということか。
原著は中学生向けの本ということで、読みやすく、大いに知的好奇心を刺激する本です。

唐突に修羅場突入『L.A.ノワール』をクリア

大人向けだから、許されるのだろうか?

プレステ3のアドベンチャーゲーム『L.A.ノワール』をクリア。オープンワールドで再現された広大な1947年のロサンゼルスを舞台に、沖縄帰還兵の刑事、コール・フェルプスが様々な事件に挑む。最初はパトロール課の警官から、交通課、殺人課、風紀犯罪課、放火特捜課と、さまざまな部署を遍歴する。当然、ステップアップするごとに事件の難易度は高まり、背後にある巨大な悪との対決姿勢が強まっていく。

流れとしては、事件発生後に現場を調査し、関係者を尋問して、カーチェイスや銃撃戦を経て事件を解決するのが基本。一般的なアドベンチャーなら現場への移動は一瞬なものが多いですが、本作では警察署から現場まで車で移動できる。ロサンゼルスの街は非常に精緻に造形されており、マップを使い回しているような場所は皆無。一般人や道行く車もちゃんといるので、生活感も出てる。よくもまあ、ここまで造り込んだものだと、感心を通りこして呆れるレベルです。

ただ、この移動シーンがゲームのテンポを悪くしているのも事実。さっさと話を進めたいのに移動で時間を取られるのはストレスになる。なので、相棒に運転を依頼すれば一瞬で現場に到着できます。オート移動があるなら、街をここまで造り込む必要があるのか微妙ではありますが。それと、フィールドに表示できる車の種類が限られているらしく、登場する車の数は百種類近くあるはずなのに、見えている車の種類は常に数種類。同じ車種が行列を作ったり、駐車場に並んでいたりするのは、ハードの限界とはいえ興ざめです。大抵の車には運転できるのに、バスや路面電車に乗れなかったり、逆に運転できる車は誰のものでも問答無用で徴発できたり、信号無視やスピード違反、衝突や人身事故のペナルティがほとんどない。ゲーム内の都合が、ゲーム内のリアリティを損なう場面を多々見かけます。

捜査は、現場で証拠品を集め、関係者に尋問する。質問内容に応じてリアクションを見せるので、信用する、疑う、反証する(証拠をつきつける)、で対応する。正しい答えを提示できれば、シナリオクリアの評価が高くなります。関係者のリアクションは非常に細かく、ウソをついたり、得心できないことがあると見せる、微妙に顔をしかめたり、視線をそらしたりする動きが実にリアル。ただ、人間の反応をリアルに考えれば、心にやましい所がある人が、かならず視線をそらせるわけではないし、無実の人間が緊張のあまり挙動不審になることだってあるでしょう。表情がリアルでも、反応はゲーム的と言わざるをえません。

登場人物や事件ががリアルタッチなため、特徴にとぼしく、人名や固有名詞が覚えづらいのも難点。人物関係や事件の流れが難解すぎて、時々誰が何のために行動しているのかわからなくなることがあった。序盤は自力でプレイしていたけれど、次第に面倒になって、中盤以降は攻略サイトで正解を確認しながら進めていた。正直、答えを見てもなぜ正解なのか理解できない選択肢がけっこうありました。

若干ネタバレになりますが、ストーリー展開も釈然としない。連続殺人犯を追っているはずなのに、個々のシナリオ上では間違った(でもシナリオ上では一番怪しい)人物を犯人に仕立て上げると最高評価だったり、その挙げ句に真犯人が突如名乗り出てきて、そいつを撃ち殺してクリアになったのには唖然とした。さらに、妻子ある主人公が唐突に事件の関係者と不倫関係になり、それが元で名声を失う展開には茫然となる。主人公の過去は丹念に描くくせに、私生活はほとんど情報がないため、自分が操作しているキャラの心理がまったく理解できない。終盤では、主人公が別人になってるし。

グラフィックはリアル、システムはゲーム的、シナリオは納得しがたい。アメリカのゲームだからとか、大人向けのゲームだからという理由とは別の意味で、終始違和感のあるゲームでした。リアルなグラフィックを追求するのも結構ですが、リアリティを「感じさせる」システムや演出を、もっと追求するべきではないでしょうか。